欧州連合(EU)の欧州員会は25日、デンマークのバイオ医薬品企業ババリアン・ノルディックが開発した天然痘ワクチン「インバネックス(Imvanex)」について、天然痘に似た特徴を持つウイルス感染症「サル痘」への使用を承認した。欧州医薬品庁(EMA)のヒト医薬品委員会(CHMP)の勧告を受け入れた。
インバネックスは天然痘ウイルスに近い「ワクシニアアンカラ」と呼ばれるウイルスを有効成分とする生ワクチンで、EUでは2013年に天然痘への適応で承認されている。天然痘ウイルスとサル痘ウイルスは類似しているため、CHMPは6月からサル痘への適応拡大について審査を進めていた。
CHMPによると、インバネックスを非ヒト霊長類に接種したところ、複数の実験データでサル痘ウイルスに対する防御効果が確認された。ヒトでもサル痘に対するインバネックスの有効性が推測され、副作用は軽度から中等度で安全性プロファイルは良好であることから、CHMPはサル痘に使用した場合も利益がリスクを上回ると結論付けた。今後、サル痘に対するワクチンの有効性を確認するため、感染が急拡大している欧州でワクチン接種者から観察データを収集する。
インバネックスは米国では「Jynneos」の製品名で販売されており、すでにサル痘への使用が承認されている。
サル痘は5月以降、欧米を中心に感染が拡大している。発熱や頭痛などの症状に加え、手や顔に特徴的な発疹が出る。感染者の大半は軽症で、重症化する例は少ないとされるが、従来の流行地であるアフリカ以外でも感染が急速に広がっていることを受け、世界保健機関(WHO)は23日、世界各国に最高度の警戒を呼びかける「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。