ロシア産天然ガスの供給削減を受けて膨らんでいる輸入会社の調達コストが川下に転嫁されると、一般世帯の負担額は大幅に膨らむ可能性がある。ショルツ首相は先ごろ、負担増加額が最大で年300ユーロにとどまるとの見方を示したが、これは最善のシナリオに基づくもので、最悪の場合1,000ユーロを超えるとみられる。
ドイツ政府は7月22日、ガス輸入国内最大手ユニパーの救済を決定した。ロシアからの天然ガス供給の大幅減を受けて調達コストが大きく膨らみ、資金繰りに懸念が出てきたためだ。調達価格が上昇しても、一定期間内は値上げできず、国内の顧客に契約で定められた量を供給しなければならないという事情がある。
他の輸入会社も状況が厳しいことから、政府は調達価格の上昇分を川下に速やかに転嫁するための特別ルールを10月1日付で解禁する。企業や消費者などの需要家はガス料金に上乗せされる分担金を通して負担することになる。
ショルツ首相の22日の発言では、分担金は1キロワット時(kWh)当たり2セントで、ガス料金の増加幅は4人世帯で年200~300ユーロにとどまる見通しだった。
一方、ハーベック経済・気候相は28日、分担金は1 kWh当たり1.5~5セントに上るとの見方を示した。価格比較サイトのチェック24によると、分担金が2セントの場合、年消費量2万kWhの世帯では料金が年476ユーロ増加。5セントでは1,190ユーロ負担増となる。
年消費量は家屋のタイプ、建築年、面積などによって大きく異なる。エネルギー大手エーオンによると、1977年までに建てられたマンションの面積85平方メートルの住宅では2万1,000kWhに上る。2002年建築の同じ条件のマンションではこれが1万400kWhに半減。新築では1,600~6,300kWhにとどまる。