エネルギー大手の独ユニパーがライン水系の石炭火力発電所で発電量を抑制し始めた。水位が低下し、石炭の輸送が難しくなっているためだ。フランスでも水温上昇を受け原子力発電が抑制されており、猛暑の影響は農作物の被害や火災、取水制限を超えて幅広い分野に広がりだしている。欧州のエネルギー不足に拍車がかかりそうだ。
ユニパーはフランクフルト東方のグロースクロッツェンブルクにあるシュタウディンガー発電所第5ブロック(マイン川沿い)で3日、ドルトムント北方のダッテルン発電所第4ブロック(ドルトムント・エムス運河沿い)で4日、それぞれ発電量の引き下げを開始した。ともに9月7日まで抑制を行う。
ライン水系はドイツの物流の大動脈で、石炭のほか、石油、穀物、飼料、建材などが大量に輸送されている。記録的な水位低下となった2018年には同国南部でガソリンなどが不足したり、化学大手BASFのルートヴィスハーフェン本社工場で生産が抑制されるなど大きな影響が出た。
現在(9日午前5時)の水位はケルンで90センチ。18年に記録した69センチを上回っているものの、長年の平均(3メートル弱)を大幅に下回っている。交通の難所であるカウプは52センチ(18年25センチ)に過ぎない。まとまった雨が降る可能性は当面低く、状況改善の見通しは立っていない。18年の悪夢が再来する可能性がある。
河川の水位が低下すればするほど、航行可能な船舶の数は減る。航行できる場合でも積み荷の量を減らさなければならないことから、輸送総量は減少する。
仏エネルギー大手EDFは原子力発電の量を抑制している。水温の上昇で原子炉冷却能力が低下しているためだ。冷却後の水を河川に戻すと水温が一段と上昇し、生態系に深刻な影響が出るという事情もあり、出力を抑制せざるを得なくなっている。