独化学業界の労使は18日、新しい賃金協定を取り決めた。賃上げ幅は計6.5%でインフレ率を大幅に下回るものの、一時金を含めると支給額は2ケタ台の伸びとなることから、物価高騰に伴う収入の目減りは大幅に緩和される見通しだ。新協定は11月1日付で発効する。期間は24年6月末までの20カ月。
賃金を2023年1月1日付で3.25%、24年1月1日付で3.25%引き上げる。経営状態の厳しい企業ではベースアップを最大3カ月、先延ばしできる。
一時金も2回に分けて計3,000ユーロ支給される。支給日はそれぞれ23年1月1日まで、24年1月1日までとなっている。一時金を加味すると被用者への支給額は平均12.94%上昇。賃金が最も低い人では増加幅が15.64%となる。
Ifoなど有力経済研究所は9月末に政府に提出した秋季経済予測でインフレ率が今年8.4%来年8.8%に達するとの見通しを示した。これをもとに計算すると2年間の物価上昇率は17.9%となる。今回の合意の支給増加幅はこれを下回るものの、化学業界がエネルギー価格高騰の直撃を受け厳しい状況にあることを踏まえると低い水準ではない。
高インフレに連動して賃金を引き上げると、物価の急上昇に歯止めがかからなくなる恐れがある。政府はこれを踏まえ労組と雇用者団体に、一時金の支給に軸足を置いた協定の締結を要請。一時金が3,000ユーロ以下であれば税金と社会保険料を全額免除する時限措置を打ち出した。化学労使は今回の合意でこの枠組みをフルに活用している。
同労使は4月、一時金1,400ユーロを支給することで合意した。当初は新たな賃金協定を結ぶ意向だったが、ロシアのウクライナ侵攻で景気と業界の先行き不透明感が極度に高まったことから、賃上げ交渉を凍結。一時金の支給でひとまず手を打った。その後の状況を踏まえ交渉を再開していた。