SAPユーザーは「クラウドオンリー」を望まず

統合基幹業務システム世界最大手の独SAPが、ユーザーが全データをクラウドに一元化して運用する「クラウドオンリー」と、サーバーやソフトウエアなどの情報システムをユーザーが自らの施設内で運用する従来型の「オンプレミス」のはざまで苦慮している。クラウドオンリーはSAPの経営効率を高めるものの、既存顧客の多くはオンプレミスの全面放棄を望んでいないためだ。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が「ドイツ語圏SAPユーザーグループ(DSAG)」の会議を取材して報じた。

DSAGは世界最大のSAPユーザー団体で、会員企業は3,800社に上る。同団体がライプチヒで開催した会議にはクリスティアン・クライン社長などの役員がオンラインで参加。ユーザー企業からはクラウドソリューションの拡充を進めるとともに、オンプレミス向けサービスを最新の水準を保つよう要望が出された。DSAGのイエンス・フンガースハウゼン会長は会員アンケート調査をもとに、ユーザーが求めているのはクラウドとオンプレミスを併用するハイブリッドだと明言した。

SAPは一時、クラウドオンリー化の方向に進んだが、現在は顧客の多様な要望を踏まえオンプレミスサービスにも目配りをしている。ただ、経営規模が小さく小回りの利く後発企業は経営資源をクラウドに一元化して競争力を高めている。SAPの株主は同社が将来性の高いクラウド事業にIT人材などを十分に振り向けられなくなることを懸念。経営陣は難しいかじ取りを迫られている。

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