ドイツ政府は9日の閣議で、国家湿地保護戦略を了承した。湿地は大気中の温室効果ガスを削減する効果が極めて高いにもかかわらず、国内の湿地の大半が干拓された結果、そうした効果が大幅に失われている現状を改めていく。希少・絶滅危惧種を保護するとともに、気温・湿度を適正化する狙いもある。
湿地の泥炭には温室効果ガスを大量に蓄える効果がある。このため減少すると温暖化を加速、増加すると防止する効果がある。
ドイツでは湿地の90%は干拓され、農業や林業で利用されたり、住宅地や道路へと転換された。この結果、二酸化炭素(CO2)が年5,300万トンも大気中に放出されている。これは同国のCO2排出総量の7.5%を占める。一方、手付かずの湿地は国土の5%にとどまるが、国土の約3分の1を占める森林よりもCO2を蓄える効果が高い。
政府はこられの事情を踏まえ、今回の戦略を打ち出した。湿地の保護と再湿地化を通してCO2排出量をまずは2030年までに少なくとも年500万トン削減する目標だ。
農地・森林化された湿地を本来の状態に戻すことが最大の柱で、湿地に適した農業や再湿地化された場所での太陽光発電を促進していく。これらの取り組みを行う農家などに支援措置を実施。収入が減少する場合は補償を行う。
湿地には多種類の希少・絶滅危惧種が生息している。このため湿地が増えればこれらの種が増える効果が期待できる。
欧州では近年、夏の干ばつが増えている。湿地面積が拡大すれば、乾燥や急激な気温の変化を緩和できることから、湿地を拡大することは快適な生活を送るうえでも重要になる。