欧州連合(EU)と米国は1月27日、気候変動、自然災害、医療、エネルギー、農業などの分野における人工知能(AI)技術の活用推進を目的とする協定に署名した。EU・米間の既存の協定はプライバシー保護など特定の領域に特化したものだったが、今回締結された「公益のための人工知能に関する行政上の取決め」は、双方がAI研究で協力体制を強化することで合意した初の包括的協定となる。
異常気象や自然災害は世界各地でより激烈になっており、今後さらにAIを活用した被害状況の予測やシミュレーションが災害への備えや緊急対応に役立つと期待されている。また、農業分野ではAIやコンピューティング技術を利用して土壌や大気の状態、収穫サイクルなどの自然条件を分析し、モデル化することで、生産効率を高めて作物の収穫量を増やしたり、持続性を大幅に高めることが可能になる。さらにエネルギー分野でもAIを活用して電力需給計画を最適化したり、より高度な電力網の管理を実現することができる。
今回の協定に基づき、EUと米国はそれぞれが保有する豊富なデータをもとに共通のAIモデルを構築し、より効率的な緊急対応や気候予測などに役立てることが可能になる。双方は地球規模の課題に対処するため、今後は第三国にも協定への参加を呼びかける方針だ。