ドイチュラントチケットの開始は5月に延期

ドイツ全国の近距離公共交通機関を低額料金で自由に利用できる「ドイチュラントチケット」の導入時期が延期される。様々な当局の承認を得るのに時間がかかるためで、公共交通機関の業界団体VDVは1月24日、従来目標より1カ月遅れの5月1日になるとの見通しを明らかにした。当初は1月1日を目指していた。

同国ではエネルギー価格の高騰を受けて昨夏、地域公共交通機関を1カ月9ユーロで利用できる定期券「9ユーロチケット」が時限導入された。市民の評価が極めて高かったことから、国と州は後続商品としてドイチュラントチケットを導入することで11月に合意した。料金は月49ユーロと9ユーロチケットを上回るものの、各地で現在販売されている地域定期券に比べると大幅に低いことから、高い需要が見込まれている。VDVの予想では、これまで地域定期券を利用してきた乗客1,130万人のほか、定期券を持っていなかった市民560万人が利用する見通しだ。

ドイチュラントチケットは国と州が補助金を出すことで料金が低く抑えられる。このため欧州連合(EU)欧州委員会の公的助成審査を受け、承認を得る必要がある。また、料金体系が変わることから、各公共交通機関の地元当局からも許可を得なければならない。これらの事情を踏まえると、4月1日にスタートするという従来目標は達成できないとVDVは判断した。

9ユーロチケットにはデジタル版とペーパー版があった。ドイチュラントチケットでは継続的な利用を促進するため、サブスクリプション方式のデジタル版に限定。スマートフォンかICチップ内蔵のカードを使うことになる。無賃乗車を取り締まるための読み取り機も必要だ。

だが、これまでICチップ内蔵カードと読み取り機を使ってこなかった小規模な交通事業者がこれらを迅速に調達することはできないことから、当初はペーパー版も発行される見通し。年内はデジタル版とペーパー版が併用されると予想されている。

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