自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)が北米に設置予定の車載電池セル工場はカナダのオンタリオ州が有力候補地となっているもようだ。同州のロビー活動家登録簿に記載された情報などをもとに経済紙『ハンデルスブラット(HB)』が1日付で報じた。
それによると、登録された文書は「生産候補地の調査」に関するもので、同州は投資とインセンティブ措置を通してVWセル工場建設プロジェクトを支援するとの記述がある。また、VWのオリファー・ブルーメ最高経営責任者(CEO)がカナダの閣僚7人と意見交換を求めたことや、ジャスティン・トルドー首相がロビー活動の対象となっていることが記されている。
広報担当者はHB紙の問い合わせに、合計で100ある基準に従って現在、北米セル工場の候補地を評価していることを明らかにしたものの、建設地の決定は下していないと回答した。ただ、競合する候補地であるケベック州のピエール・フィッツギボン経済相は同紙に、「わが州は彼ら(VW)の電池工場が必要とするものをタイムリーに提供することができない」と述べ、事実上の誘致断念を表明しており、オンタリオ州が有力な候補地となっているのは間違いないようだ。
同州南東部のキングストンではVWが電池正極材分野で協業するベルギー金属大手のユミコアが電池材料工場の建設を計画している。VWがセル工場を同州に建設すれば、調達する正極材の輸送距離が短いというメリットを享受できる。
VWは2030年までに電気自動車(BEV)を25モデル以上、北米市場に投入する。カーボンフットプリント(製品ライフサイクル全体で排出される温室効果ガスの総量)をできるだけ少なくするため、同地にギガファクトリー(巨大電池工場)を設置するとともに、電池材料のサプライチェーンを構築する意向だ。電池製造に必要不可欠なリチウム、ニッケル、コバルトが豊富なカナダは原料の採掘から加工で大きな役割を果たす見通しのため、昨年8月にカナダ政府と趣意書を締結。12月には同国でセル工場の候補地を模索する契約をカナダ政府と締結した。
北米で新たなBEVモデル生産へ
HB紙はまた、VWが北米で新たなBEVモデルを生産することを先週、決定したことも報じた。同地で現在、生産しているBEVはSUVの「ID.4」のみ。新たなモデルはID.4よりも小さなコンパクトSUVになる。20年代半ばから米チャタヌーガ工場で生産を開始する計画だ。広報担当者はそうした計画があることを認めたものの、詳細は伏せているという。