電機大手の独シーメンスは8日、2023年9月通期の業績予測を引き上げた。第1四半期(10~12月)決算が好調だったうえ、サプライチェーンひっ迫の緩和で受注の消化が進むと予想されるためで、売上成長率(為替とポートフォリオの変化を除いた実質ベース)を従来の「6~9%」から「7~10%」へと上方修正。購入価格配分会計適用前の1株当たり利益(EPS pre PPA)も「8.70~9.20%」から「8.90~9.40%」へと引き上げた。
第1四半期の売上高は180億7,000万ユーロとなり、前年同期を10%上回った。同社が重視する製造部門の税引き前利益(EBT)も9%増の26億8,700万ユーロと好調で、ローラント・ブッシュ社長は、難しい経済環境のなかで新年度の好スタートを切ったことに満足の意を示した。
業績をけん引したのは産業IoT事業を手がけるデジタル・産業部門とスマートインフラ部門だ。EBTはそれぞれ22%増の11億5,200万ユーロ、47%増の7億400万ユーロに拡大した。鉄道部門(13%減の1億9,500万ユーロ)と医療機器子会社シーメンス・ヘルシニアーズ(21%減の6億3,600万ユーロ)は振るわなかった。
翌9日に開催された株主総会では好決算にもかかわらず、株主から批判が出た。批判点は、同社がこれまで進めてきた事業の選択と集中は不十分だというもの。株主である資産運用会社DWSのポートフォリオマネジャーは、好業績が株価に反映されていないのは、複合企業色を払拭しきれていないこが原因だとして、デジタル企業化を徹底して推し進めることを要求した。
株主の機関投資家は、相乗効果の低いシーメンス・ヘルシニアーズを長期的に子会社にとどめる経営陣の方針と、業績不振の旧子会社シーメンス・エナジー(SE)に現在も35%出資していることを特に強く批判している。シーメンスは22年4-6月期(第3四半期)にSEの保有株で評価損27億ユーロを計上したことから、22年9月期の純利益が40%減の37億2,300万ユーロと大きく落ち込んだ。