薬価規制を緩和へ、医薬品供給不足を受け法案を閣議了承

ドイツ政府は5日の閣議で、「後発医薬品の供給不足克服と小児薬の供給改善のための法律(ALBVVG)」案を了承した。厳しい薬価規制のしわ寄せで抗生物質や降圧剤など重要な医薬品の供給不足がここ数年、深刻化している現状を改める狙い。医薬品市場としてのドイツの魅力を高めるとともに、欧州での医薬品生産を促進し、供給不足が発生しないようにする。カール・ラウターバッハ保健相は「医薬品供給の経済化を推し進めすぎた」と過度の薬価抑制政策の問題点を指摘し、是正の意向を表明した。

高齢化の進展に伴う医療費の膨張を抑制するため、ドイツ政府は長年、薬価を引き下げる政策を推進してきた。この結果、同国は利幅の小さい市場となったことから、他の国への製品供給を優先するメーカーが増加した。連邦医薬品・医療機器審査局(BfArM)が同日発表したところによると、抗生物質や液体タイプの解熱剤、降圧剤、抗うつ剤、抗がん剤など計473種類の医薬品で現在、不足が発生している。

ALBVVG法案はこうした問題を解消するために作成された。小児薬については上限価格と割引契約の適用対象外とするとともに、最大50%の値上げを1回限りで認める。22~23年の風邪シーズンに子供用の液体解熱剤などが不足したことが背景にある。

製造元が少なく供給不足が発生しやすい医薬品についても、最大50%の値上げを1回限りで認める。

抗生物質では、生産の50%以上を欧州連合(EU)ないし欧州経済領域(EEA)で行った製品について、公的健康保険の入札で配慮するルールを導入する。入札の一定比率をEU・EEA生産の製品に割り当てる。

低価格で応札したメーカーが落札するという現行ルールでは中国ないしインドの企業が独占的な地位を確保している。医薬品の供給を中印に過度に依存するリスクがコロナ禍で鮮明になったことから、欧州の自給率を高める狙いだ。

抗生物質は生産能力を比較的短期間で構築・拡大できることから、第一弾として同ルールを適用する。ラウターバッハ氏は将来、抗がん剤など他の医薬品にも適用する考えを示した。

法案にはこのほか、医薬品の供給不足が発生する兆候を早い段階で把握する早期警戒システムを導入することや、院内薬局と医療機関向け薬局の在庫義務を強化することも盛り込まれている。

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