ドイツ企業の89%がクラウドコンピューティングを利用していることが、情報通信業界連盟(Bitkom)のアンケート調査で分かった。「計画ないし議論中」も8%に上っており、近い将来に90%を超えるのはほぼ確実とみられる。Bitkomのベルンハルト・ローレーダー専務理事は「クラウドはデジタル世界のニューノーマルだ」と明言した。
不特定多数の利用者を対象とするパブリッククラウドを利用する企業は55%だった。同比率は年々上昇しているものの、企業が自らシステムを構築して利用するプライベートクラウド(72%)を依然として下回っている。
クラウドで利用する機能では「データの保存」がダントツで多く92%に上った。これに「ウェブ会議」が76%、「様々なソフトの計算能力」と「オフィス用ソフトウエア」がともに73%、「人事・経理・財務計画」が72%で続いた。
「ERP(企業資源計画)」は30%、「人工知能(AI)サービス」は32%、「IoT(モノのインターネット)サービス」は37%にとどまった。ローレーダー氏は、投資資金が少なく、IT能力の低い中小企業でもクラウドを利用すればAIなどの革新的な技術にアクセスできると指摘。クラウドは資金・技術力の低い企業に大きなメリットをもたらすと述べた。
クラウドの利用度に関しては「クラウドオンリー」が11%、「クラウドファースト」が36%だった。同氏は「企業がすべてのアプリケーションをクラウドに移すことは、少なくとも中期的にはない」との見方を示した。
クラウドを利用する目的では「コスト削減」が64%で最も多かった。これに僅差で「二酸化炭素(CO2)排出削減」(63%)で続いた。3位は「プラットホームとSaaSへの切り替え」と「ITセキュリティの向上」でともに57%だった。
「クラウド環境で過去1年以内にサイバー攻撃を受けた」企業は26%あった。ただ、25%は「セキュリティ対策で影響を軽減できた」と答えており、「事業に大きな影響が出た」は1%にとどまった。
自社で利用するデータセンターの設置国(地域)として「好ましい」ないし「選択肢に入る」国としてはドイツとの回答が圧倒的に多く100%(「好ましい」が93%)に達した。2位は欧州連合(EU)で91%(同50%)、3位は英国で45%(1%)、4位は米国で42%(14%)、5位は日本で37%(18%)、6位はインドで19%(10%)だった。中国は3%(2%)と極めて低く、ロシアとの回答は1社もなかった。
欧州クラウド「ガイアX」の利用に関心があるとの回答は46%に上った。17%はすでに利用を計画している。
ガイアXのメリットでは「コンプライアンスとデータ保護での法的安全性」が71%で最も多かった。これに「ITセキュリティの極めて高い標準」が66%、「主権性が確保された信頼できるデータ交換」が62%で続いた。ローレーダー氏はデータエコノミーの分野で独・欧州の競争力を高めるためには「ガイアXに準拠したサービスが可能な限り迅速に登場することが決定的に重要だ」と述べた。