欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2017/10/2

EU情報

英・EUの離脱交渉、4回目も大きな進展なし

この記事の要約

EUと英国は9月25~28日に英国の離脱をめぐる第4回交渉会合を行った。英国が支払う「清算金」など離脱条件に関する協議は、英メイ首相が先ごろ行った演説でEU側に歩み寄る姿勢を示したことで進展したものの、決着しないまま終了 […]

EUと英国は9月25~28日に英国の離脱をめぐる第4回交渉会合を行った。英国が支払う「清算金」など離脱条件に関する協議は、英メイ首相が先ごろ行った演説でEU側に歩み寄る姿勢を示したことで進展したものの、決着しないまま終了。英国側は通商をはじめとする将来の関係をめぐる交渉の開始を取り付けることはできなかった。

6月中旬に始まったEUと英国の離脱交渉は、まず清算金、英国に居住するEU市民の権利保護など離脱条件についての協議を行い、これに「十分な進展」があったと加盟国が判断すれば、通商など将来の関係に関する話し合いに進む2段階方式で行われることになっている。これまでの交渉では双方の意見が対立し、英国が望む早期の第2段階入りが難しい情勢となっていた。

メイ首相は9月22日の演説で、事態の打開に向けて、大きな争点となっている清算金をめぐる問題で、EUの現行中期予算の最終年である2020年まで約束した拠出金を支払うことを言明。EU市民の権利保護についても譲歩を示した。

これを受けて今回の協議は、これまでより良好な雰囲気の中で行われた。EUのバルニエ首席交渉官は4日間の交渉を終えた後の記者会見で、メイ首相の演説を「(交渉に)新たな活力をもたらした」と評価し、協議に一定の進展があったことを確認。ただ、第2段階の交渉に進むには不十分で、なお「数週間または数カ月がかかる」と述べた。

清算金の支払い額をめぐっては、英国側は具体的な額を提示していないが、メイ首相は演説で200億ユーロ程度となることを示唆した。EU側が主張する600億ユーロと大きな開きがある。今回の交渉でも溝が埋まらず、決着は持ち越しとなった。このほか、EU市民の権利保護に関する司法権の問題でも、双方の主張に隔たりがある。

メイ首相は先の演説で、2019年3月に離脱してから約2年間の移行期間を設けることを提案。同期間中は英国がEU単一市場にとどまるなど、実質的にEU離脱を2年間遅らせる意向を表明した。しかし、バルニエ首席交渉官は同問題に関する協議も、離脱条件をめぐる交渉が大きく進展するまで先送りする方針を打ち出した。

離脱交渉の期間は原則2年だが、英政府がEU離脱を正式通告した3月29日にカウントダウンが始まったため、実質的な交渉期間は限られている。交渉結果は欧州議会などの承認を得なければならず、その手続きに時間がかかることから、18年秋には交渉を妥結させる必要がある。

時間切れとなって将来の関係が決まらないまま離脱することを避けたい英政府は、10月19~20日に開かれるEU首脳会議で、第1段階の交渉に「大きな進展」があったと認定され、自由貿易協定(FTA)締結など将来の関係をめぐる協議に入ることを目指している。これを実現するためには、10月9日に始まる次回の交渉で懸案を解決しなければならないが、EU側では同認定が12月の首脳会議まで持ち越されるとの見方が浮上している。