KYBURZ Switzerland

スイスの電動車両メーカー。1991年の設立で、チューリッヒ近郊のフライエンシュタインに本社を置く。従業員数150人超の小規模・中堅企業(KMU)で、配送用や法人・個人向けに電動車両を開発・生産している。同社はこれまでに、スイス、アイスランド、ノルウェー、フィンランドなどに電動車を出荷した実績があり、世界全体で2万2,000台超の車両を販売した。

最も知られているのはスイスポストなどに供給している電動三輪車「KYBURZ DXP」で、2019年末にはオーストリアポストから、同モデル1,000台を受注した。これにより、オーストリアポストからの受注台数は累計で2倍の2,000台となった。

■ リチウムイオン電池のリサイクル設備を稼働

同社は2020年9月4日、リチウムイオン電池の新しいリサイクル設備の操業を開始した。

当該技術は、チューリッヒ応用科学大学(ZHAW)の学生であったOliver Groux氏が学士論文用に考案したアイデアで、スイス連邦材料試験研究所(EMPA)の協力を得て開発した。

同社は電動三輪車に搭載しているリチウムイオン電池のリサイクルをこれまで、外部に委託していたが、従来のリサイクル方法は大量のエネルギーを必要とするうえ、化学薬品を使用するため、持続可能性が低いと考えていた。

Oliver Groux氏が考案した方法は、最大91%の金属を再利用できるなど高効率に優れているうえ、環境にやさしく安全なリサイクル方法であるという。同社はOliver Groux氏を採用し、リサイクル設備をこのほど稼働させた。

当該方法では、リン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO4)を2.5ボルトまで放電し、個々の部品に分解する。その後、カソードとアノードを水処理し、アルミニウム箔と銅箔を分離する。電解質からは、蒸留工程によりリチウムイオン塩を得ることができるほか、流出された炭酸塩はリサイクル工程に使用することができる。アノードはさらに熱処理により結合材料を分解する。

この加工方法は、特定の化学薬品を使用すれば、ニッケルマンガンコバルト(NMC)系やニッケル酸リチウム(NCA)系のリチウムイオン電池やリサイクルにも使用することができるという。

リサイクル設備の処理能力は当初、1年あたり4,000セル程度だが、最終的に車両3,000台分に相当する年2万4,000セルに拡大していく方針を示している。

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