欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/10/3

EU情報

「偽りの住民投票」受け第8弾の対ロ制裁へ、石油価格の上限設定や禁輸拡大など提案

この記事の要約

欧州委員会は9月28日、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対する追加制裁案を発表した。ウクライナ東・南部4州でロシア編入への賛否を問う「住民投票」が強行されたことを受けた措置。ロシア産石油の取引価格に上限を設けること […]

欧州委員会は9月28日、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対する追加制裁案を発表した。ウクライナ東・南部4州でロシア編入への賛否を問う「住民投票」が強行されたことを受けた措置。ロシア産石油の取引価格に上限を設けることや、ロシア産製品の輸入禁止枠の拡大などを柱とする内容。加盟国の承認を得て第8弾となる制裁を発動する。

欧州委のフォンデアライエン委員長は記者会見で「ロシアが支配する地域で仕組まれた偽の住民投票は、領土を奪い、力によって国境を変えようとする違法な試みだ。われわれは偽りの住民投票と、それによるいかなる併合も認めない。ウクライナの状況を悪化させた代償を払わせる」と述べ、ロシアを強く非難した。

ロシア産石油の取引価格に上限を設定する案は、6月のドイツで開かれた主要国首脳会議(G7サミット)で大筋合意しており、欧州委はこの方針に沿って制裁案に盛り込んだ。欧州委は同措置によって「ロシアの収入を減らす一方、国際的なエネルギー価格の安定につながる」と指摘している。

一方、輸入禁止の対象となるロシア産製品のリストを拡大することで、ロシアの収入は約70億ユーロ(約9,700億円)削減される見通し。また、EUからロシアへの輸出規制も強化し、航空部品や電子部品、特定の化学関連品などの輸出を禁止する。

また、EU加盟国の市民がロシア国営企業の役員に就くことを禁じるほか、対ロ制裁に従わない企業への取り締まりを強化する。

さらに今回新たに1,300以上の個人・団体が制裁の対象となる。ボレル外交安全保障上級代表によると、「ウクライナの領土保全を損なう行為に責任がある重要な意思決定者」が主な対象で、ロシア軍の高官や新興財閥(オリガルヒ)のほか、偽情報やプロパガンダを流したり、ウクライナ領内でロシアによる実効支配を支援する個人・団体などが該当するもようだ。

一方、EUは9月30日、ロシアによるウクライナの東・南部4州の併合宣言を受け、「違法な併合を断固として拒否する」との非難声明を発表した。併合に向けて強行された「住民投票」に関しては、「ウクライナの独立・主権・領土を侵害する目的で仕組まれた違法な行為」と断じ、「ウクライナには侵略から自衛し、占領地を開放する権利がある」と指摘。ロシアが核兵器の使用をほのめかしたり、予備役を対象とした部分動員を開始して危機をエスカレートさせている現状に触れたうえで、引き続きEUとしてウクライナを全面的に支持する方針を表明した