欧州議会と閣僚理事会、欧州委員会は8日、EU排出量取引制度(EU-ETS)の対象に含まれていない農業や運輸などの産業分野における温室効果ガス排出削減目標を厳格化する法案の内容で基本合意した。加盟国ごとの削減目標を定めた「努力分担規則(Effort Sharing Regulation=ESR)」を改正し、2030年までにEU全体で非ETS対象セクターからの排出量を05年比で40%(現行では30%)削減する。欧州議会と閣僚理の正式な承認を経て改正ESRが施行される。
ESRは建築物、道路および国内海上輸送、農業、廃棄物処理などEU-ETSが適用されていない産業分野で排出される温室効果ガスについて、30年までの削減目標を加盟国ごとに設定している。経済的格差などを考慮した公正な分担により、すべての加盟国が目標達成に貢献する仕組みだ。EUではこれらの部門からの排出量が全体の約6割を占めている。欧州委員会は21年7月、30年までにEU域内の温室効果ガスを1990年比で55%削減する目標を達成するための政策パッケージ「Fit for 55」を発表し、EU-ETSの改革案などとともにESRの改正案を盛り込んだ。
改正案によると、デンマーク、フィンランド、ドイツ、ルクセンブルク、スウェーデンは30年までに05年比で50%(現行では38~40%)の削減が求められる。オランダ、オーストリア(それぞれ48%)、フランス(47.5%)、ベルギー(47%)なども高い削減目標が設定された。これに対し、ブルガリアは05年比の削減目標が10%(現行ではゼロ)と最も低く、ルーマニア、クロアチア、ラトビア、ポーランド、ハンガリーも10%台と低く設定されている。