ドイツ政府は9日の閣議で、同国の半導体メーカー、エルモス・セミコンダクターのドルトムント工場を中国同業の賽微電子(サイ・マイクロエレクトロニクス)が完全買収する計画を認可しないことを決定した。ドイツの公共秩序と安全にとってリスクとなる恐れがあると判断したため。経済省は仮に条件付きで買収を承認したとしても特定されたリスクを排除できないとの見解を示した。
エルモスは車載半導体メーカー。同社は昨年12月、ドルトムントの200ミリウエハー工場を賽微のスウェーデン子会社シレックス・マイクロシステムズに約8,500万ユーロで売却することで合意した。同工場の製品は技術革新度が低く、当局は取引を承認すると予想されていた。
報道によると、ハンブルク港トラーオルト埠頭への中国遠洋海運集団(COSCO)の出資計画をめぐる議論と、10月に開催された中国共産党の党大会で習近平総書記(国家主席)が見せた権力誇示を受け、所轄大臣のハーベック経済相は批判の意思を示すために不認可を決意したという。
独貿易法(AWG)とその施行細則を定めた貿易政令(AWV)には、EU域外の企業が重要技術を持つ独企業への10%以上の出資を計画した場合、政府が審査することが規定されている。審査の結果、公共秩序・セキュリティに支障が見込まれるとの結論に至れば計画は許可されない。
半導体は同審査の対象となる技術分野であるため、政府は審査を行った。経済省は対独投資を歓迎するとしながらも、「我が国の安全にとって有害な投資」は受け入れられないと指摘。ハーベック氏は「まさに半導体分野ではドイツと欧州の技術的・経済的な主権を守ることが重要だ」との立場を示した。
9日の閣議では外資による独企業の別の買収案件も不許可となった。ハーベック氏はメディアの問い合わせに、企業秘密のため社名を明かすことはできないと述べた。『ハンデルスブラット』紙によると、ミュンヘン近郊のゲルメリングに本社を置く半導体検査装置メーカーのERSエレクトリックを中国企業が買収する計画が承認されなかったもようだ。