欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/11/24

総合 – 欧州経済ニュース

欧州議会が欧州委員長に対する問責決議、優遇税制めぐり週内に投票へ

この記事の要約

欧州議会の極右政党を中心とする議員76人が18日、欧州委員会のユンケル委員長に対する問責決議案を提出した。ルクセンブルクが世界の大手企業に対して極めて低い税率を適用してきた問題で、昨年まで18年間にわたり同国の首相を務め […]

欧州議会の極右政党を中心とする議員76人が18日、欧州委員会のユンケル委員長に対する問責決議案を提出した。ルクセンブルクが世界の大手企業に対して極めて低い税率を適用してきた問題で、昨年まで18年間にわたり同国の首相を務めたユンケル氏の責任を問い、欧州委員長を辞任するよう求めている。欧州議会本会議で週内に投票が行われる見通しだ。

欧州委は低税率を武器に企業誘致を推進してきたルクセンブルク、アイルランド、オランダの課税措置が違法な国家補助にあたる可能性があるとして、6月から本格調査を進めている。ルクセンブルクの優遇税制をめぐっては、調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が今月初め、同国当局が2002~10年にかけて、世界の大手企業340社以上との間で秘密の取り決めを結んでいたとの調査結果を公表。この間に首相兼財務相を務めていたユンケル氏が企業の課税逃れに加担したとの批判が高まっている。

ユンケル委員長に対する問責決議案を提出したのは反EUを掲げる英国独立党(UKIP)、仏極右政党の国民戦線(FN)、コメディアンから転身したベッペ・グリッロ氏率いる伊第2党の5つ星運動などの所属議員。決議案は「租税回避を助長する政策の責任を負うべき人物が欧州委員長を務める状況を容認することはできない」と強調している。

一方、欧州議会の最大会派で中道右派の欧州人民党(EPP)と、第2会派で中道左派の社会民主進歩同盟は共にユンケル氏に対する支持を表明している。このため、実際に投票が行われた場合、賛成票が問責決議の可決・成立に必要な3分の2に達する可能性は極めて低い。ただ、5月の欧州議会選挙で躍進したEU懐疑派のポピュリスト政党が「考慮すべき政治勢力」(5つ星運動のマルコ・ザンニ議員)であることを示す最初の動きとして注目される。