欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/12/15

EU産業・貿易

銀行破綻処理基金の拠出ルールで合意、大手銀の負担を当面は軽減

この記事の要約

EU加盟国は9日に開いた財務相理事会で、EU内の銀行の破綻処理を一元化する制度の柱となる「単一破綻処理基金(SRF)」への各銀行の拠出に関するルールで合意した。当初の案と比べて、大手銀行の負担が当面は軽減されることになる […]

EU加盟国は9日に開いた財務相理事会で、EU内の銀行の破綻処理を一元化する制度の柱となる「単一破綻処理基金(SRF)」への各銀行の拠出に関するルールで合意した。当初の案と比べて、大手銀行の負担が当面は軽減されることになる。

SRFは各国の銀行による拠出を積み立てて運用される。対象銀行の保証付き預金の総額の少なくとも1%に相当する550億ユーロ規模とすることを目標としている。各国が自国銀行向けに創設した基金を土台に、2015年1月1日に運用を開始。16年1月からSRFとして運用されるが、各国ベースの基金を段階的に統合するため、基金の完全共通化は8年後の2023年となる。

大きな焦点となっていたのは、各銀行の毎年の拠出額を決めるルール。欧州委員会が10月にまとめた原案では、大手銀行の拠出額は各行の資産規模と抱えるリスクの度合いに応じて決め、上限は設けないのに対して、小規模銀行については同様の原則が適用されるものの、一般的にリスクが小さいことから、大手銀行を大きく下回る水準の固定額を拠出するという内容だった。

これをめぐっては、「シュパルカッセ」と呼ばれる中小規模の貯蓄銀行が多く存在するドイツにとって好ましい条件であることから、一部の大手銀行が金融市場を支配するため自国銀行が大きな負担を求められるフランス、ルクセンブルクなどが反発していた。

これを受けて調整を進めた結果、SRFの運用が開始される16年から同ルールを段階的に適用することで合意した。フランス側に歩み寄った格好で、23年まで一部の拠出は各国が独自に運用する破綻処理基金への銀行の拠出に関するルールに基づいて決まる。初年度は全拠出額の60%が各国のルールで決まる形となり、当面は大手銀行の負担が共通ルールと比べて少なくなる。同比率は段階的に縮小し、23年から共通ルールに統一される。