欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/1/5

総合 – 欧州経済ニュース

ギリシャで25日の総選挙が決定、信用不安再燃の懸念も

この記事の要約

ギリシャ議会で12月29日、次期大統領を決める最終投票が行われたが、与党の候補であるディマス元欧州委員が当選に必要な票を確保することができず、選出に至らなかった。これを受けて議会は31日に解散され、1月25日の総選挙実施 […]

ギリシャ議会で12月29日、次期大統領を決める最終投票が行われたが、与党の候補であるディマス元欧州委員が当選に必要な票を確保することができず、選出に至らなかった。これを受けて議会は31日に解散され、1月25日の総選挙実施が決まった。総選挙ではEUに約束した財政緊縮策に反発する野党の急進左派連合(SYRIZA)が優勢で、現政権が推進してきた財政再建がとん挫し、ギリシャの信用不安が再燃する懸念が出ている。

次期大統領の当選には、議会(定数300)の投票で200票を確保する必要がある。議席数が155にとどまるサマラス首相率いる新民主主義党(ND)と全ギリシャ社会主義運動党(PASOK)の連立与党は、無所属や少数野党の議員の支持を取り付け、ディマス候補を当選させたい考えだった。しかし、同候補の獲得票は17日に実施された第1回投票で160票、23日の第2回投票で168票と必要数に届かなかった。これを受けて29日に実施された最終投票では、当選に必要な票が180票とハードルが下げられたが、獲得したのは第2回投票と同じ168票にとどまり、選出に失敗。憲法の規定に基づき、議会の解散・総選挙が決まった。

債務危機で深刻な信用不安に陥り、一時はユーロ離脱さえささやかれたギリシャは、EUと国際通貨基金(IMF)から2010年に1,100億ユーロ、12年に1,300億ユーロの緊急金融支援を取り付け、厳しい緊縮策を柱とする財政再建に取り組み、危機は沈静化した。

ギリシャはEUの支援から昨年末に脱却し、支援終了後に自力での資金調達が難しくなる場合に備えた予防的融資枠を設定することになっていた。しかし、最後の18億ユーロの支援実施の条件となる財政再建策をめぐる協議が紛糾したため、12月初めに支援期限が2月まで2カ月延長されることが決まった経緯がある。

政府は当初、次期大統領を2月に選出する予定だったが、支援脱却に向けた協議が再開される前に政権基盤を固め、不透明感を払しょくするため、前倒しでの実施を決定。総選挙になった場合のリスクを訴え、野党・無所属議員の一部を取り込んでディマス候補の選出にこぎ着けることを目指していたが、最終投票でも票を上積みすることはできなかった。

最近の支持率調査では、国民が反発する緊縮路線からの方針転換を唱える急進左派連合が一貫して首位となっているが、同党が政権を握ると財政再建が混乱し、後退局面を抜け出し成長に転じた経済も悪化するとの懸念から、このところ与党との差は縮まりつつある。このため、EUとIMFに約束した財政再建を一方的に放棄する方針を打ち出していた急進左派連合のツィプラス党首は、強硬色をやや緩め、交渉での合意を目指す姿勢に転じた。それでも年金、最低賃金の引き上げ、公務員の削減中止、国営資産売却の凍結などを進める方針を掲げており、同党が総選挙で勝利すれば改革が後退するのは必至。新政権の要求をEUなどが受け入れる可能性も極めて低く、支援脱却が遠のきかねない。

また、どちらが総選挙で勝つにしても、単独での政権樹立は困難で、少数野党と組む連立政権となるため、政局が不安定となり、財政再建と景気の先行きが不透明となるのは避けられない情勢だ。