欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/12/7

EU情報

デンマーク国民投票、EUとの連携拡大を否決

この記事の要約

デンマークで3日、司法内務分野におけるEUとの連携拡大の是非を問う国民投票が実施され、反対53.1%、賛成46.9%で政府の提案は否決された。パリ同時テロや深刻化する難民問題を受け、政府はEUとの連携拡大の必要性を訴えて […]

デンマークで3日、司法内務分野におけるEUとの連携拡大の是非を問う国民投票が実施され、反対53.1%、賛成46.9%で政府の提案は否決された。パリ同時テロや深刻化する難民問題を受け、政府はEUとの連携拡大の必要性を訴えて支持を求めていたが、移民排斥を唱える極右政党の呼びかけに応じて反対票を投じた国民が多数派を占めた。

デンマークは1973年に他の北欧諸国に先駆けてEUの前身である欧州共同体(EC)に加盟したが、主権喪失や福祉水準の低下に対する懸念から、92年の国民投票でEU創設のためのマーストリヒト条約の批准を否決。その後の交渉で通貨同盟、防衛、司法・内務協力、EU市民権の4分野でEU共通政策からのオプトアウト(適用除外)を認める「エジンバラ合意」が成立し、これを受けて93年に再び実施された国民投票でマーストリヒト条約批准が承認された経緯がある。

今回の国民投票は司法内務分野でオプトアウトの権利を放棄し、EUとの統合を進めるべきか否かが争点だった。これは来年から欧州刑事警察機構(ユーロポール)の機能が強化されるため、オプトアウトの状態では同組織にとどまることができず、データベースへのアクセスなどが大幅に制限されることが背景にある。ラスムセン首相率いる与党・自由党や最大野党の社会民主党などは、反対派が多数を占めればデンマークはユーロポールを軸とする警察協力の枠組みから締め出され、テロ対策に重大な影響が出る恐れがあると警告。一方、移民排斥を唱えるデンマーク国民党(DPP)は、これ以上EUへの主権移譲を認めれば、いずれ移民政策でもEUがすべての決定権を持つようになるなどと主張し、反対票を投じるよう訴えた。

ラスムセン首相は投票結果を受け、「答えは明らかにノーだ。国民の判断を完全に尊重する」との声明を発表。今月11日にブリュッセルでトゥスクEU大統領およびユンケル欧州委員長と会談し、今後の対応策について協議する方針を明らかにした。また、自由党の幹部Soren Gade議員はデンマークの通信社リツァウス(Ritzau)とのインタビューで、「国民にとって最善の取り決めを結べるよう努力するが、非常に困難な作業になるだろう」と述べた。