欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/2

EUその他

加盟国がバイオ燃料規制案で基本合意、穀物由来燃料の上限は7%に

この記事の要約

EU加盟国は5月28日開いた大使級会合で、再生可能エネルギーの利用促進に向けて持続可能なバイオ燃料の生産を可能にするため規制案で基本合意した。輸送部門における再生可能エネルギーの利用比率のうち、菜種や大豆など穀物由来の従 […]

EU加盟国は5月28日開いた大使級会合で、再生可能エネルギーの利用促進に向けて持続可能なバイオ燃料の生産を可能にするため規制案で基本合意した。輸送部門における再生可能エネルギーの利用比率のうち、菜種や大豆など穀物由来の従来型バイオ燃料の比率を最大7%に制限することを柱とする内容。食料生産を阻害することなく温室効果ガスを削減するため、食用作物に代わって藻類や農産廃棄物などを原料とする「第2世代」バイオ燃料の生産を促す狙いがある。規制案は月内に開かれる閣僚理事会で正式承認される見通しで、その後、欧州議会で審議される。

EUが2009年に制定した「再生可能エネルギー指令」は、2020年までに運輸部門における再生可能エネルギーの利用比率を10%以上とする数値目標を掲げ、加盟国に目標達成を義務づけている。さらに、同指令は目標達成のために使用することができるバイオ燃料の持続可能性基準を定めており、原料採取から製造、流通段階も含めたバイオ燃料の温室効果ガス削減率を最低35%とし、17年以降は最低削減率を50%に引き上げることなどを明記している。

一方、バイオ燃料の持続可能性をめぐる議論では、燃料用作物を生産するためもともとその土地で生産されていた作物を別の土地で生産しなければならず、森林や湿地などの破壊が進んで必ずしも温室効果ガスの削減につながらないことがその後の研究で明らかになってきた。

欧州委はこうした現状を踏まえ、12年に第2世代バイオ燃料への投資促進を目的とした規制案を発表。輸送部門で使用される再生可能エネルギーのうち、穀物由来のバイオ燃料の比率を最大5%に制限する◇バイオ燃料の供給業者と加盟国に対し、間接的土地利用変化(ILUC:燃料用作物生産のための農地移転)の影響を踏まえたバイオ燃料の温室効果ガス排出実績に関する報告書の作成を義務づける――-などを提案していた。

欧州議会は昨年9月、欧州委の原案を一部緩和し、穀物由来燃料の上限を6%とする修正案を採択。新規制に対する業界側の反発を背景に、12月の閣僚理ではさらに上限を7%に引き上げる案が提示されたが、ルールの厳格化を求めるデンマークやベルギーなどの強い反対で合意に至らず、加盟国の間で意見調整が続いていた。