欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/2

EUその他

ムーディーズも欧州銀の格付け見通し引き下げ、破綻処理一元化を疑問視

この記事の要約

米格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは5月30日、欧州の82銀行の長期信用格付けの見通しを「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げたと発表した。EUの銀行破綻処理を一元化する新制度で […]

米格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは5月30日、欧州の82銀行の長期信用格付けの見通しを「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げたと発表した。EUの銀行破綻処理を一元化する新制度で、まず債権者などに負担させる「ベイル・イン」と呼ばれるシステムが導入されることを受けたもの。これによって3大格付け会社がすべて、同制度に関連して欧州銀行の格付け見通しを引き下げたことになる。

格付け見通しを引き下げられたのは、伊ウニクレディト、独コメルツバンクなど。国別の対象銀行数はドイツが12行、フランスが10行、オーストリアが8行、スウェーデンが5行、イタリアが4行などとなっている。

破綻処理を一元化する「単一破綻処理メカニズム(SRM)」制度では、破綻した銀行の処理を納税者に負担させないようにするため、銀行が拠出する「単一破綻処理基金」を活用するが、それに先立って当該銀行の債権者、大口預金者に負担を迫る「ベイル・イン」が導入される。これによって破綻処理の枠組みは強化されるが、ムーディーズは債権者のリスクが高まることによる信用力低下を重視し、格付け見通しを引き下げた。

3大格付け会社では、欧州系フィッチ・レーティングスが3月、米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が4月に、同じ理由で同様の措置を講じていた。