欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/2

EUその他

GM作物栽培認可でオプトアウト導入へ、加盟国が認可見直し案で基本合意

この記事の要約

EU加盟国は5月28日、ブリュッセルで大使級会合を開いて遺伝子組み換え(GM)作物の認可ルールについて協議し、EUが栽培を認可した品種についても加盟国が独自の判断で国内での栽培を制限または禁止できる制度(オプトアウト)を […]

EU加盟国は5月28日、ブリュッセルで大使級会合を開いて遺伝子組み換え(GM)作物の認可ルールについて協議し、EUが栽培を認可した品種についても加盟国が独自の判断で国内での栽培を制限または禁止できる制度(オプトアウト)を導入することで基本合意した。GM作物をめぐっては、英国やスペインなどの推進派とフランスを中心とする反対派の間で依然として溝が深く、栽培認可の是非に関する議論が平行線をたどっている。オプトアウトを容認することで、安全性が確認された品種については速やかに域内での栽培を認可し、EUの規制に対する米国などの批判をかわす狙いがある。今回の妥協案は6月12日の環境相理事会で承認される見通しで、その後、欧州議会で審議される。

GM作物の栽培認可をめぐる協議では、加盟国の立場の違いから特定多数決による採決では決着がつかず、長期にわたる議論の末、安全性が確認された品種について欧州委員会が最終的に認可を勧告する形が定着している。EU司法裁判所の一般裁判所は2012年、米ダウ・アグロサイエンスと米デュポン傘下のパイオニア・ハイブレッド・インターナショナルが共同開発したGMトウモロコシ「1507」の審査期間が10年以上に及んでいることに対する訴えを受け、栽培認可の手続きが不当に長期化している状態はEU法に違反するとの判断を示し、これをきっかけに認可手続きの見直しが進められていた。

EU外交筋によると、大使級会合ではベルギーが棄権した以外はすべての国がオプトアウトの導入を支持したもよう。加盟国は安全性や環境への影響分析以外に倫理面や社会経済的な根拠に基づいて、独自にGM作物の栽培を禁止または制限することが認められる。オプトアウトの具体的な手順としては、GM作物の栽培認可に反対する国が欧州委員会に要請し、認可の申請先から除外してもらうシステムが提案されている。ただし、自国での栽培を禁止する場合でも、EUレベルで栽培が認可されたGM作物の流通・販売を阻止することはできない。

妥協案をまとめたEU議長国ギリシャの報道官は、認可に反対する国が直接、各企業と個別に接触するのではなく、欧州委を通して申請先から除外するシステムを採用することで、最大限の法的透明性を確保しながら加盟国にGM作物の栽培を拒否する権利を認めることができると説明している。一方、欧州委のビンセント報道官は今回の合意について、「慎重ながら楽観的にみている」と述べ、遅くとも来年の初めには新たな認可手続きが正式に承認されるとの見通しを示した。