英財政研究所(IFS)は10日公表した英国のEU離脱に伴う経済面の影響に関する報告書で、EU離脱後も欧州経済領域(EEA)の構成国としてEU単一市場の一員にとどまれば、EEAからも離脱して単に世界貿易機関(WTO)加盟国としてEU市場にアクセスする場合と比べ、英国の国内総生産(GDP)を4%押し上げることができるとの試算を明らかにした。IFSは単一市場にアクセスできることと、メンバーの地位を維持することはまったく意味合いが異なると強調。EUとの交渉では離脱後もEEAに残留するかどうかが重要な鍵になると指摘している。
報告書をまとめたIFSの研究員イアン・ミッチェル氏は「経済の観点からみると、英国はEUとの関係について重要な選択を迫られている。単一市場へのアクセスとメンバーシップには極めて大きな差がある」と強調。単一市場のメンバーシップによって規制上の制約といった非関税障壁が取り除かれるため、とりわけサービス貿易に大きな経済的メリットをもたらすと指摘したうえで、「EUから離脱した後も単一市場のメンバーとしての地位を維持するということは、将来的にEUは英国の意見を考慮せずに規制を決め、英国はそれを受け入れなければならないということだ」とつけ加えた。
EEAはEU28カ国にノルウェー、リヒテンシュタイン、アイスランドを加えた31カ国から成り、EU単一市場にアクセスする権利を持つ。英国の貿易はおよそ半分がEU向けであるため、EEAに留まればEU離脱の影響を小さくできる。ただ、EEAもEUと同様、人の移動の自由も認めているため、東欧などからの移民の流入を阻止することは難しい。単一市場への完全なアクセスを維持しながら移民の流入を制限したいというのが英国の立場だが、EU側がこうした要求を受け入れるとは考えにくく、今後の交渉ではEEAからの離脱か残留かが焦点の1つになりそうだ。