欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/7/14

EU産業・貿易

最低賃金法制導入、EU22カ国に拡大

この記事の要約

独16州政府の代表で構成される連邦参議院(上院)は11日、最低賃金法案(労使協定の自律の強化に向けた法案)を可決した。同法案はすでに連邦議会(下院)を通過しており、来年1月1日付で施行される。法定最低賃金を導入するEU加 […]

独16州政府の代表で構成される連邦参議院(上院)は11日、最低賃金法案(労使協定の自律の強化に向けた法案)を可決した。同法案はすでに連邦議会(下院)を通過しており、来年1月1日付で施行される。法定最低賃金を導入するEU加盟国は、これにより22カ国に拡大する。

ドイツには全国・全業界一律の最低賃金がこれまで存在しなかった。労使が政治の介入を排して労働条件を自主的に定める制度「労使協定の自律(タリフアウトノミー)」が深く根づいているためで、法定賃金はこの制度に抵触するとみなされてきた。

だが、経済競争力の強化に向けて2000年代の前半に行われた構造改革(アジェンダ2010)の副作用として低賃金セクターで働く被用者が増えたことで状況が変化した。構造改革は熟練技能を持たない長期失業者が労働市場に足がかりを得るという点では一定の効果があったものの、フルタイムで働いても生活に必要な収入を稼げない就労者が発生するというねじれも生み出したためだ。

与党はこうした事態を受け、昨年11月の政権協定に全国・全業界一律の最低賃金導入を盛り込み、金額を8.5ユーロ(時給)とすることを取り決めた。

最低賃金は来年1月1日から導入され、18歳以上に適用される。ただ、労使協定で独自の最低賃金を取り決めた業界では16年末まで8.5ユーロ未満の賃金が認められる。このため、全業界を拘束する最低賃金が導入されるのは17年1月からとなる。

1年以上の長期失業者に対しては就職後6カ月間、最低賃金を適用しなくてもよい。賃金水準が高いと就職できないケースが多数、出てくるためだ。このほか、農業季節労働者と新聞配達員についても例外が認められる。

最低賃金の額は労使の代表で構成される「最低賃金委員会」が専門家の助言を受けて2年ごとに見直す。

EU28カ国の中で法定最低賃金のない国は来年以降、オーストリア、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、イタリア、キプロスの6カ国となる。