EU、英との離脱協定・政治宣言で正式合意

2018年11月26日発行 No.225号

EUは25日に開いた臨時首脳会議で、英国の離脱条件を定めた離脱協定案と、離脱後の双方の関係の大枠を定める政治宣言案で正式合意した。これによって17カ月に及んだ離脱交渉は、英国が離脱する2019年3月29日を前に大きな山場を越え、合意がないまま離脱する事態の回避に向けて前進。EU、英国による批准に焦点が移る。ただ、英国内では離脱案への反発が根強く、議会で批准される目通しは立っておらず、なお「合意なき離脱」の懸念がくすぶっている。

EUと英国は13日、離脱協定案で暫定合意。これに続いて22日には、英のEU離脱後の通商、安全保障などの関係の大枠を定める政治宣言案で原則合意し、今回の臨時首脳会議での正式合意にこぎ着けた。

離脱協定は、北アイルランドとEU加盟国アイルランドの厳しい国境管理を避けるための方策や◇英国が2019年3月末にEUを離脱した直後に双方の関係が激変し、貿易などに大きな影響が及ぶのを避けるため、2020年12月末まで「移行期間」を設定し、同期間中は英国が2020年12月末までEU単一市場と関税同盟にとどまる◇同期間中は英国がEUのルールに従う一方、意思決定には参加できない◇離脱前に英国に居住しているEU出身者、他のEU加盟国に居住している英国出身者の権利を離脱後も保障する――などを盛り込んだ内容。最大の焦点となっていた国境問題では、移行期間中に解決できない場合の「バックストップ(安全策)」として、期限付きで英国が関税同盟にとどまり、関税ゼロなど現在と同様の通商関係を維持することで合意した。

政治宣言案は通商、経済協力、刑事司法、外交、安全保障などで「野心的で広範囲にわたる深く柔軟な関係」を築くと明記。通商関係については「自由貿易圏を含む包括的な関係」を目指すとしている。このほかEUと英国は金融サービスに関して、双方の規制が「同等」と評価する仕組みを設けることで、英とEUの国境を超えたサービスを展開できるようにすることで合意した。同等かどうかの審査は2020年6月末までに完了させる。

政治宣言案をめぐっては、スペインが領有権を主張する英領ジブラルタルの扱いをめぐってスペインが反発し、拒否する構えを示していた。しかし、英国が離脱後に2国間協議で同問題の解決を図ることを約束したことから、スペイン政府は24日に反対を撤回。正式合意に至った。

両案は欧州議会と英国議会による批准が必要。欧州議会では承認される見込みで、英議会で批准されるかどうかが焦点となる。

英国内では「ハード・ブレグジット(強硬離脱)」派が、移行期間設定によって離脱が実質的に先送りされ、当面は英国がEUのルールに従わなければならない一方で、EUの意思決定に参加できないことを問題視し、EUとの合意に猛反発。さらにEU離脱そのものに反対する勢力も、離脱の可否をめぐる国民投票の再実施を求めて批准に反対している。英メイ首相と欧州委員会のユンケル委員長はともに、今回の合意が「唯一の可能な合意だ」としているが、議会では野党が批准拒否を明言しているほか、与党・保守党内でも離反の動きがある。12月中に行われる予定の採決で、批准に必要な過半数の承認を取り付ける目途は立っていない。

一方、仮に批准されたとしても、大きな難関が待ち受ける。新たな通商関係などの詳細は固まっておらず、今回の合意では難題が先送りされたためだ。双方は協議の時間を稼ぐため、必要と判断した場合に移行期間を1回限りで1~2年延長することで合意した。延長するかどうかを20年7月1日までに合意の上で決める。それでも調整の難航が必至だ。

また、北アイルランドとアイルランドの国境管理問題は、移行期間中に行われる包括的な通商協定に関する協議の中で解決することになっているが、最終的な解決策を見つけるのは至難の業。一時的なものとされているバックストップ措置が恒久化され、英国が事実上、関税同盟に残留することになる可能性もあり、これが英国の強硬離脱派が協定案に反発する大きな要因となっている。

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