EU統計局ユーロスタットが7月31日発表した同月のユーロ圏のインフレ率(速報値)は前年同月比0.4%となり、前月の0.5%から0.1ポイント縮小した。これは2009年10月以来の低水準。景気回復の足取りが重く、物価が上がりにくい状況が続いている。
同月の低インフレは、エネルギーと食品などの値下がりが主因。エネルギーは0.1%の低下となり、前月のプラス0.1%からマイナスに転じた。食品・アルコール・たばこはマイナス幅が0.2%から0.3%に膨らんだ。サービスは1.3%の上昇。工業製品は横ばいだった。
価格変動が激しいエネルギー、食品・アルコール・たばこを除いた基礎インフレ率は0.8%となり、前月と同水準だった。
ユーロ圏のインフレ率は、欧州中央銀行(ECB)が目標値とする2%を大きく下回っており、10カ月連続で1%を割り込んでいる。ECBはデフレを回避するため、6月に金融緩和を実施。ユーロ圏18カ国に適用される最重要政策金利を0.1ポイント引き下げ、過去最低の0.15%としたほか、民間金融機関が手元資金をECBに預け入れる際の金利(中銀預金金利)をゼロからマイナス0.1%にした。
7月のインフレ率が縮小したことを受けて、ECBに追加措置として量的金融緩和を求める圧力が強まるのは必至。ただ、基礎インフレ率が下がっていないことや、ウクライナ危機をめぐる欧米の対ロシア制裁強化で原油価格が値上がりするとの観測が急浮上していることから、市場ではECBが当面は量的緩和の実施を見送り、6月の緩和措置の効果を見守るとの見方が多い。