ルフトハンザ、政府が90億ユーロを支援へ

新型コロナ危機で経営が悪化している独航空大手ルフトハンザは5月25日、政府の支援を受けることで合意したと発表した。支援額は最大90億ユーロ。政府は新株を取得し、同社を半国有化することになる。取締役会と監査役会、臨時株主総会のほか、EUの欧州委員会の承認が必要となる。

ルフトハンザは政府の経済安定化基金(WSF)と交渉を行い、合意に達した。政策金融機関のドイツ復興金融公庫(KfW)が民間銀行と共同で30億ユーロの協調融資を行う。またWSFは、決議権のない出資を最大57億ユーロ実施。第三者割当増資も引き受けて株式20%を1株当たり2.56ユーロ、総額3億ユーロ程度で取得する。ルフトハンザを買収から守る必要が出た場合は株式5%プラス1株を追加取得し、出資比率を重要決議の阻止に必要な25%超に引き上げる。

決議権のない出資はクーポン付きで、同社はWSFに毎年、所定の利子を支払わなければならない。利率は2020年と21年が各4%。その後は毎年上昇し、27年には9.5%に達する。利子を支払わない場合、WSFは同出資のうち10億ユーロを2度に分けて(24年以降と26年以降)株式へと転換できる。これに伴い取得する株式は1回当たり5%。26年以降の株式転換は、同社を買収から守るための株式追加取得(5%プラス1株)を行わなかった場合にのみ実施される。

決議権のない出資のうち47億ユーロ(株式転換の対象とならない部分)はルフトハンザの自己資本となる。

同社が決議権のない出資を全額、返済した後に、株価がWSFの取得価格(2.56ユーロ)を超えた場合、WSFは全保有株を時価で売却しなければならない。売却期限は23年末となっている。

公的支援を受けることから、ルフトハンザは配当の見合わせと役員報酬の制限を義務付けられる。また、国の承認を得た監査役2人を受け入れなければならない。

今回の合意は、同社の経営に対する政府の関与を可能な限り排除したいという経営陣の思惑と、支援資金を回収できず国が損失を被る事態を回避したいという政府の思惑を調整する形で実現した。このため国は買収から同社を守る場合を除き、株主として持つ議決権を行使しないことを確約した。

同社はもともと国有企業だったが、1997年に完全民営化された。コロナ危機を受けて国は再び資本参加することになる。

報道によると、欧州委は今回の合意を承認する条件として、ルフトハンザがハブ空港のフランクフルトとミュンヘンで発着枠の一部譲渡を求めているもようだ。マルグレーテ・ベステアー委員(競争政策担当)は独フランクフルター・アルゲマイネ紙に、ドイツ政府の支援が融資にとどまらず出資も含んでいることを指摘。こうした半国有化の場合、欧州委は審査基準が緩いコロナ関連の支援であっても詳細に吟味しなければならないと述べた。ドイツ政府は発着枠の譲渡要求に反発しており、アンゲラ・メルケル首相は所属政党・キリスト教民主同盟(CDU)の会合で「(欧州委と)ハードな争い」を行う意向を表明したという。

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