新型コロナウイルスの感染拡大を受けて経営危機に陥っている独航空大手ルフトハンザの臨時株主総会が25日、テレビ会議方式で開催され、政府が総額90億ユーロの支援を行う計画が圧倒的多数の賛成で承認された。株主の間では同社が部分国有化されることへの不満が強いものの、国の支援がなければ近日中の経営破綻が避けられないとから、出席者の多くはしぶしぶ承認した格好だ。
ルフトハンザはフライト件数が激減し、資金繰りが急速に悪化していることから、経営陣は公的支援を受けることを決めた。5月下旬に成立した国との合意内容は◇政策金融機関のドイツ復興金融公庫(KfW)と民間銀行から30億ユーロの協調融資を受ける◇国の経済安定化基金(WSF)から決議権のない出資を最大57億ユーロ受ける◇WSFは第三者割当増資を引き受けて株式20%を総額約3億ユーロで取得する――など。国は監査役会に役員2人を派遣するものの、経営には介入しないことを約束している。
ただ、株主の間ではルフトハンザの雇用を維持するために政府が経営に介入し、経営再建の足を引っ張ることへの警戒感が根強い。株式15.5%を持つ大株主のハインツヘルマン・ティーレ氏は、そうした懸念を理由に政府支援計画を批判していたことから、株主総会で同計画が承認されるかどうかは直前まで不透明だった。
総会では同氏を含む計98%の株主が支援計画に賛成票を投じた。ティーレ氏は同計画が否決されればルフトハンザは支払い不能で経営破綻へと追い込まれるという事情を踏まえ賛成に回った。貯蓄銀行系投資会社Dekaの関係者は総会に先立ち『フランクフルター・アルゲマイネ』に、「我々株主には国の資本参加のための増資を歯ぎしりしながら承認する以外に選択肢がない」と述べており、国の出資を積極的に支持した株主は少ない。
ルフトハンザは経営再建に向けて従業員の協力も受ける意向で、交渉を行っている。客室乗務員労組UFOとの間ではすでに合意が成立。経営上の理由による整理解雇を2024年まで見合わせる見返りとして、勤務時間や賃金削減などを通してコストを5億ユーロ以上、圧縮することを取り決めた。パイロット労組VCとの交渉も進展した段階にある。グランドスタッフを代表するサービス労組Verdiとの交渉は難航しているもようだ。