復興・回復ファシリティ運用指針発表、クリーンエネルギー開発とデジタル化推進

欧州委員会は17日、新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けたEU経済の復興に向けて創設する復興基金の中核となる「復興・回復ファシリティ」の運用に関する指針を発表した。総額6,725億ユーロの資金を活用し、クリーンエネルギー技術の開発やデジタル化を推進するよう加盟国に求めている。EUは2021年1月から同ファシリティの拠出を開始する計画で、加盟国は同指針に沿って10月15日~21年4月30日までに経済再建計画を欧州委に提出する必要がある。

復興基金は市場で調達した資金をEUの中期予算に組み込み、新型コロナによる経済の打撃が大きい国に補助金と融資の形で配分するというもの。総額7,500億ユーロの基金のうち、6,725億ユーロ(補助金3,125億ユーロと融資3,600億ユーロ)が復興・回復ファシリティに充当され、加盟国が策定した経済再建計画を欧州委が審査し、閣僚理事会が承認した場合に資金が供与される。同ファシリティは新型コロナ危機からの経済再建を目的としているため、補助金部分については22年までに全体の7割を拠出する計画で、欧州委は加盟国に再建計画の早期策定を求めるとともに、審査および承認手続きも迅速に行う方針を示している。

指針によると、加盟国の再建計画は環境への配慮やデジタル化への移行につながる措置を含んでおり、潜在的な経済成長や雇用創出、危機からの回復や対応能力の増強に貢献する内容であることが求められる。

具体的にはクリーンエネルギー技術の開発促進と再生可能エネルギーの開発および導入促進、公共施設やビルなど建物のエネルギー効率化、輸送部門におけるクリーンエネルギー技術の利用促進や電気・水素ステーションの整備、域内全域における次世代移動通信システム「5G」ネットワークを含めた高速ブロードバンドサービスの早期導入、行政サービスのデジタル化、クラウド化による産業データの活用促進、教育分野での情報通信技術(ICT)の利用促進――の7つを重点分野として挙げている。

復興・回復ファシリティは一部を除き、承認された経済再建計画が実行に移され、欧州委が目標の達成状況を見極めたうえで拠出されることになる。また、資金が供与された後に、他の加盟国が対象となる事業について目標が十分に達成されていないと考えた場合、EU議長国に対し適正な運用かどうか検証を求めることができる。

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