日立が英原発事業から撤退、コロナ禍による資金問題悪化で

日立製作所は16日、英国の原子力発電所建設プロジェクトから撤退すると発表した。同事業は資金調達の問題で2019年から凍結状態にあったが、新型コロナウイルスの感染拡大で投資環境が悪化していることから撤退に踏み切る。

日立は2012年に英ホライズン・ニュークリア・パワーを買収し、英国での原発事業に参入。ウェールズ北西部アングルシー島に原発2基を建設し、2020年代前半に運転を開始する計画だった。

しかし、原発の安全基準強化に伴うコスト増などで事業費が膨らみ、民間からの投資や英政府による追加支援を模索したが、不調に終わったため、19年1月に凍結を発表していた。

日立は声明で、コロナ禍で資金調達がさらに困難になったことを考慮し、同事業からの撤退を決めたと説明。今後は英政府や関係機関と原発建設予定地の扱いなどについて協議していくとしている。凍結した時点で2,946億円の損失を計上しているため、正式撤退が業績に及ぼす影響は軽微という。

英政府は地球温暖化対策として原発運営を推進しているが、稼働中の原発の約半数が数年以内に寿命を迎えるため、新たな原発の建設が急務となっている。日立の撤退により、進行中のプロジェクトは仏電力最大手フランス電力公社(EDF)が中国の広核集団(CGN)と組んで南西部のヒンクリーポイントで進める原発建設事業だけとなり、政府のエネルギー戦略に狂いが生じることになる。

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