EU・米「貿易・技術評議会」が初会合、半導体調達やAI開発などで協力

EUと米国は9月29日、貿易やハイテク分野での協力強化を目的とする閣僚級の会合「米EU貿易・技術評議会(TTC)」を開催した。中国を念頭に、半導体の安定調達に向けて連携することや、人工知能(AI)などの分野で人権に配慮した技術開発を進めることなどで合意した。

EUと米国は6月の首脳会議でTTCの設置を決めた。米東部ペンシルベニア州ピッツバーグで第1回会合が開かれ、EU側はドムブロフスキス上級副委員長(通商政策担当)とベステアー上級副委員長(競争政策担当)、米側はブリンケン国務長官、レモンド商務長官、タイ米通商代表部(USTR)代表が参加した。

共同声明によると、双方は半導体、AI、国際貿易体制、輸出管理、投資審査の5分野で協力を強化することで一致した。世界的な半導体の供給不足に対応するため、需給や生産能力などに関する情報を共有して安定したサプライチェーンを構築し、長期的には次世代半導体の研究、設計から製造に至るエコシステム全体の強化と耐性の改善に取り組む。一方、中国がAIを使って国民への監視を強めていることを念頭に、革新的で信頼性が高く、人権など普遍的な価値を尊重したAIシステムの構築で協力する。

国際貿易体制に関しては、「非市場的で貿易を歪曲する不公正な慣行」から企業や消費者、労働者を守るため、EU米が連携を強化する。また、最先端の技術や軍事転用可能な技術が敵対国に流出するのを防ぐため、輸出管理や投資審査でも双方が足並みをそろえる。

双方はこれら5分野に技術標準、気候・クリーン技術、情報通信技術・サービス(ICTS)の安全保障などを加えた10分野で作業部会を設置し、具体策を検討する。TTC第2回会合の開催時期や場所は未定だが、10月27日に輸出管理の作業部会が予定されている。

TCC会合の開催にあたり、EUと米国の間で懸案になっている鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税や、個人データの移転に関する内容が盛り込まれるとの期待もあったが、実際には言及がなかった。また、EU内には中国に対する姿勢にもばらつきがあり、中国を名指しする表現もなかった。

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