仏製薬大手サノフィは9月28日、メッセンジャーRNA(mRNA)技術を活用した新型コロナワクチンの開発を中止すると発表した。mRNA型ワクチンが米ファイザーと独ビオンテックの連合、米モデルナの独壇場となっていることから、開発を進めても無意味と判断した。今後はタンパク質ベースの新型コロナワクチンの開発などに集中する。
サノフィは米バイオ医薬品企業トランスレート・バイオと提携し、新型コロナのmRNA型ワクチンの開発を進めてきた。同日には、これまでの臨床試験(治験)で十分な効果が確認されたと発表した。
しかし、開発で先行したファイザー連合、モデルナのmRNA型ワクチンがすでに世界中で承認され、接種の主軸となっていることから、さらに多額の資金を投じて開発する意味がなくなったとして、治験の最終段階(第3相)に進む前に開発を断念した。
サノフィは英グラクソ・スミスクライン(GSK)と共同で、タンパク質ベースの新型コロナワクチンを開発中だ。こちらは治験の最終段階に進んでおり、年内の承認、接種開始を目指している。
一方、同社はこれまでに積み上げたmRNA型ワクチンの開発技術を生かし、季節性インフルエンザに転用する方針で、2022年に治験を開始する予定。今後はタンパク質ベースの新型コロナ、インフルエンザ用ワクチンの開発に経営資源を集中する。
サノフィは8月、提携関係にあったトランスレート・バイオを32億ドルで買収することで合意したと発表していた。トランスレート・バイオはmRNA技術を活用した医薬品に特化した企業。季節性インフルエンザなど新型コロナ以外の感染症でもmRNAワクチンの利用が進むと期待し、同分野で強い技術力を持つ同社の買収に踏み切った。