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2010/2/17

総合 - ドイツ経済ニュース

ギリシャ財政問題でユーロの先行きに懸念

この記事の要約

ギリシャの財政赤字問題を受け欧州単一通貨ユーロが1999年の導入後初の大きな試練に直面している。同国のデフォルト(債務不履行)懸念や、スペイン、ポルトガルなど財政が悪化している他のユーロ加盟国にも飛び火するとの観測が市場 […]

ギリシャの財政赤字問題を受け欧州単一通貨ユーロが1999年の導入後初の大きな試練に直面している。同国のデフォルト(債務不履行)懸念や、スペイン、ポルトガルなど財政が悪化している他のユーロ加盟国にも飛び火するとの観測が市場で強まり、ユーロ相場の下落傾向が続いているのだ。15日に開催されたユーロ圏財務相会合ではギリシャの財政再建計画が承認されたものの、同国が計画通りに財政赤字を圧縮できるかについては欧州連合(EU)加盟国からも疑問の声が出ており、新たな対策の追加が避けられない見通し。危機が広がると最悪の場合、リーマンショックに匹敵する深刻な金融・経済危機が再来し、ユーロの信認が大きく揺らぐとの指摘もある。

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ギリシャの財政危機は昨年10月の政権交代に伴い、前政権が財政赤字を粉飾し欧州委員会に過少申告していたことが発覚したのが発端。当初は国内総生産(GDP)比3.7%とされていた2009年の赤字は、実際にはユーロ圏最悪の同12.7%と、EU財政規律の上限であるGDP比3%を大幅に上回る見込みだ。これを受けギリシャ国債の格付けが引き下げられて金融市場に動揺が広がっている。

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事態の鎮静化に向け同国のパパンドレウ首相は1月中旬、2010年の赤字をGDP比8.7%まで削減し、2012年には上限枠内の同2.8%に引き下げるとの財政再建策案をまとめた。

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ただ、ギリシャはユーロ加盟前の1997年から財政赤字を実際よりも少なく申告してきた「前科」があり、欧州委は今月3日に同案を承認した際、赤字削減が計画通りに進むかどうかを厳しく監視し、実行状況を定期的に報告させることを付け加えた。第1回目の報告は3月中旬に提出される。

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この案は15日のユーロ圏財務相会談でも承認されたものの、翌16日に開かれたEU財務相理事会ではEU各国の財務相から「ギリシャ政府の財政再建計画は不十分だ」(スウェーデンのボルク財務相)などの声が相次ぎ、同国が財政赤字の対GDP比率を今年8.7%以下に抑えられないことが明確になった場合は3月中旬にも追加措置を義務づけることが取り決められた。

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デフォルトなら信用危機も

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ギリシャが仮にデフォルトとなった場合、同国の国債を持つ金融機関などは減損処理を余儀なくされる。国外の銀行がギリシャ対して持つ債権の額は計3,026億ユーロ。日刊紙『ヴェルト』によると、05年以降に発行されたギリシャ国債の3分の2は欧州(同国を除く)の銀行が保有しており、減損処理がなされれば企業への融資抑制が強まる恐れがある。

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だが、問題はそれにとどまらない。

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金融機関はギリシャ国債のデフォルトリスクを踏まえ、デリバティブの一種であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を活用し債権が未回収にならないようにしている。これはギリシャが債務不履行になった場合、国債を持つ銀行でなく、デフォルトリスクを引き受けた取引先の銀行が損失を被るという取引だ。

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問題はどの金融機関同士でCDS契約を結んだのかが外部からは分からないため、大きなデフォルトが起こると、どの銀行が巨額の損失を抱え込んだかも分からないということにある。この結果、リーマンショック後のように銀行が他の銀行の支払い能力に不信感を持ち、銀行間取引市場が機能不全に陥る事態も出てくる。

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EU当局やユーロ加盟国が最も恐れているのはギリシャの問題が同じく財政が悪化しているスペイン、ポルトガル、アイルランド、イタリアに波及することだ。特に、イタリアとスペインはユーロ圏の域内総生産(GDP)に占める割合がそれぞれ約17%、12%と高く、両国がデフォルトに陥ればユーロは存続の危機に立たされかねない。

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IMF支援ではユーロへの介入に警戒感

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こうした事態を防ぐために、EUと加盟国が手を携えて対策を打つべきか、それともギリシャ支援を控えるべきかについては意見が分かれている。欧州中央銀行(ECB)のイッシング前主任エコノミストは、ギリシャを支援すると財政赤字の削減に自力で取り組んでいる他のユーロ加盟国が自助努力を放棄するようになると述べ、EUによる支援に反対する姿勢を明確に打ち出した。一方、Ifo経済研究所のジン所長は「EUはギリシャを支援し、(財政が悪化した他のユーロ加盟国に)ドミノ効果が広がることを防ぐべきだ」との立場だ。

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EUはこれまでのところ、ギリシャを支援するかどうかを決定していない。まずは同国の今後の動向を見極める姿勢をみせている。

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ただ、水面下ではすでに具体策の検討が始まっている。方向性としては(1)EUが単独で支援する(2)支援を国際通貨基金(IFM)に任せる(3)EUとIMFが共同で支援する――の3つがある。IFMの支援に関してはギリシャを除くユーロ加盟国やECBの政策に同機関が介入することへの警戒感が当局者の間で強いようだ。

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