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2010/5/5

ゲシェフトフューラーの豆知識

企業年金、運営機関の支給カットで企業に補償義務

この記事の要約

公的年金とは別に企業が独自に提供する企業年金には大きく分けて2種類ある。1つは企業が年金原資を引当金の形で独自に積み立てて運用し退職したOB社員に支給するもの、もう1つは外部の機関に保険料を支払い運用から年金支給までの運 […]

公的年金とは別に企業が独自に提供する企業年金には大きく分けて2種類ある。1つは企業が年金原資を引当金の形で独自に積み立てて運用し退職したOB社員に支給するもの、もう1つは外部の機関に保険料を支払い運用から年金支給までの運営を全面的に委託するものである。どちらが良いかはケースバイケースで一概には何とも言えないが、事業規模が小さい企業であれば外部機関に委託した方が煩わしい業務が生まれない分、良いのではなかろうか。

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ところで、委託先の機関が財務悪化を理由に年金支給額を引き下げた場合、そのしわ寄せは誰が引き受けるのだろうか。年金を受給するOB社員が貧乏くじを引かねばならないのか、それともかつての雇用主である企業が減額分の穴埋めをしなければならないのか。この問題をめぐる係争でフランクフルトにあるヘッセン州労働裁判所が下した判決が先ごろ公開され、話題となっている。

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係争が起きたのは企業年金を外部の年金基金(Pensionskasse)を通して支給することを労働契約で取り決めた化学企業(以下A社)。A社を退職したOB社員はこの年金基金から企業年金を受け取っている。

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同基金は財務が悪化した2003年、定款の規定に基づき出資者集会で年金支給額を永続的に年1.4%引き下げることを決議した。これを不当と考えたA社のOBである原告は同基金を相手取って裁判を起こしたものの、敗訴したため、減額分をA社が穴埋めするよう要求。新たな裁判を起こした。

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これに対しA社は企業年金の保険料を支払うこと以外に義務はないと反論。第1審ではこの主張が支持され、原告は敗訴した。

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一方、控訴審のヘッセン州労裁は一審判決を破棄し、原告勝訴を言い渡した。判決理由で裁判官は、企業年金の支給を外部機関に委ねた場合でも雇用主には社員に約束した年金支給を履行する義務があるとした企業年金法(BetrAVG)1条1項の規定を指摘。年金基金による減額分の穴埋めをA社に命じた。

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