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2010/6/2

経済産業情報

電磁誘起透明化、原子1個で効果確認

この記事の要約

マックス・プランク量子工学研究所(MPQ)は光を通さない試料に2本の光を同時に照射すると1本が試料を通り抜ける「電磁誘起透明化」(EIT)と呼ばれる現象を、わずか1個の原子で観察することに成功した。研究チームはさらに、E […]

マックス・プランク量子工学研究所(MPQ)は光を通さない試料に2本の光を同時に照射すると1本が試料を通り抜ける「電磁誘起透明化」(EIT)と呼ばれる現象を、わずか1個の原子で観察することに成功した。研究チームはさらに、EIT効果を起こす原子の数をコントロールして光の透過率を変化させることにも成功、量子コンピューターの実現に一歩近づいたとしている。

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EITとは、ある波長の光(プローブ光)を吸収してしまう原子や物質に2次レーザー光を照射すると、吸収が抑制されて光が透過する(透明化)現象。光と物質の相互作用による量子干渉によって起こる。量子干渉は量子力学的にみると「重ね合わせ」(1つのビットが0であると同時に1でもあること)の状態で、これを自由に制御できると従来型コンピューターの計算能力をはるかにしのぐ超高性能コンピューターの実現に道が開ける。このため、技術の開発や改善に向けて世界中の研究機関・企業がしのぎを削る。

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従来の研究では、EIT効果を確認するために「非常に多くの原子が実験で使用されていた」(MPQ)。このため研究チームは「原子の数をどこまで減らせるか」に重点を置き実験を行った。

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実験ではアルカリ金属のルビジウム原子を光共振器に閉じ込め、原子を1つ1つ減らしながらEIT効果を測定。原子が最後の1個になった段階でプローブ光を当てたところ、光の透過率は80%だったが、2次レーザー光を当てると光の透過率は95%に上昇し、EIT効果が確認できたという。今回の研究成果は『Nature』誌に掲載された。

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