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2010/5/26

ゲシェフトフューラーの豆知識

口頭注意は「警告」に当たらず

この記事の要約

従業員が問題行動を起こした際、無断欠勤などの重大な違反でない限り、ドイツの企業はまず「警告(Abmahnung)」を行う。警告にも関わらず、従業員が同様の行為を繰り返す場合は解雇できるため、労務管理上、重要な手続きである […]

従業員が問題行動を起こした際、無断欠勤などの重大な違反でない限り、ドイツの企業はまず「警告(Abmahnung)」を行う。警告にも関わらず、従業員が同様の行為を繰り返す場合は解雇できるため、労務管理上、重要な手続きである。このルールは民法典314条に明記されている。

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ところで、警告とは具体的にどんなものなのだろうか。それを示す格好の判決がこのほど下された。

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裁判を起こしたのはフレックス勤務を導入する企業の社員。同社員は必ず勤務しなければならない時間帯(コアタイム)にたびたび遅れて出社したため、雇用主はまず口頭で注意した。それにも関らず遅刻が繰り返されたことから即時解雇を通告したところ、同社員に提訴された。

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「こんな社員は解雇されて当然」と考える読者は多いのではなかろうか。だが、所轄のラインラント・ファルツ州労働裁判所は解雇無効の判決(訴訟番号:6 Sa 270/09)を下した。

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どうしてだろうか。結論を先に書くと、雇用主が口頭注意しか行わなかった点に問題があるのだ。

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裁判官は判決理由で、口頭注意は警告と異なり法的拘束力をほとんど持たず、雇用主は解雇に必要な手続き(警告)を踏んでいないと指摘した。

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では、警告とは何なのか。少なくとも◇会社(官庁)の正式文書である◇文書内に問題とする行為を明記する◇同様の問題行為が今後も繰り返される場合は解雇する可能性があることも明記する――の3点は不可欠の要件となる。頭の片隅にこれをとどめておくと、何かの時に役立つだろう。

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