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2010/7/21

経済産業情報

薄膜太陽電池、製膜時の高温化が効率改善のカギに

この記事の要約

CIGS薄膜太陽電池(以下:CIGS)の製膜時の温度が低くなると薄膜を構成するガリウム(Ga)とインジウム(In)分子の濃度分布に偏りがでることを、マインツ大学、IBMなどの産学研究チームがコンピューターシミュレーション […]

CIGS薄膜太陽電池(以下:CIGS)の製膜時の温度が低くなると薄膜を構成するガリウム(Ga)とインジウム(In)分子の濃度分布に偏りがでることを、マインツ大学、IBMなどの産学研究チームがコンピューターシミュレーションで突き止めた。分布の偏り(偏析)は変換効率低下の原因となることから、研究チームは今回の発見がCIGSの効率向上につながることに期待を寄せる。

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CIGS(分子式:Cu(In1-x,Gax)Se2)は銅、インジウム、ガリウム、セレンの化合物からなる太陽電池。シリコン(Si)を使用しないため、Si供給が不足しても製造できる。また、光電変換効率が高く、経年劣化もないなどのメリットがあり、将来の太陽電池として大きな期待を集めている。

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マインツ大学の研究者によると、計算上はInとGaの比率が0.3:0.7の時にCIGSの光電変換効率が最大になる。しかし、実際の比率はこの逆で、0.7:0.3の時に最も変換効率が高くなるという。

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研究チームはこの謎に迫るため、分子レベルでの薄膜生成シミュレーションに取り組んだ。密度汎関数法とモンテカルロ法の2つの手法を組み合わせてシミュレーションを繰り返した結果、Gaを多めに含むCIGSはInを多めに含むCIGSより偏析の度合いが高くなることが判明。また、温度と偏析の関係では、温度が高いほど成分元素の濃度分布が均一になる一方、室温よりやや低い温度になるとInを含む相とGaを含む相が完全に分かれてしまうことが明らかになった。

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今回の研究は連邦環境省(BMU)が支援する太陽電池高性能化研究プロジェクト「comCIGS」の一環で、マインツ大学、IBMのほか特殊ガラスメーカーSchottなどが参加している。

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