欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2011/6/15

経済産業情報

医薬品の特許延長でECJ法務官見解、「待ち時間」5年以下でも申請可

この記事の要約

欧州連合(EU)・欧州司法裁判所(ECJ)のYves Bot法務官は9日、特許出願から製造販売認可までの期間が5年以下の医薬品について特許延長に必要な追加保護証(SPC)の申請を一切認めないドイツの制度はEU法に違反する […]

欧州連合(EU)・欧州司法裁判所(ECJ)のYves Bot法務官は9日、特許出願から製造販売認可までの期間が5年以下の医薬品について特許延長に必要な追加保護証(SPC)の申請を一切認めないドイツの制度はEU法に違反するとの見解を示した。ECJはおよそ8割のケースで法務官の意見に沿った判決を下すため、最終的にドイツでも多くの特許薬でSPC申請が認められるようになる公算が高い。

\

特許権の存続期限は特許出願日から原則として20年間と定められている。ただ、新薬の場合、特許出願から販売認可までに時間がかかるため、EUでは医薬品の追加保護証に関する理事会規則(1768/92/EEC)によって、最長5年まで特許期限の延長を認めている。延長期間は出願から認可までの期間から5年を引いたもので、認可までに8年を要した場合は3年の延長が認められる。また、当該医薬品が小児患者にも処方できる場合は、2007年に施行された小児医薬品規制(1901/2006/EC)の規定により許延長期間が半年上乗せされるため、最長5年半の延長が認められる。

\

出願から認可までの期間が5年に満たない新薬の場合でもSPC取得の可否が問題になるのは、SPCが小児医薬品規制に基づく特許延長の前提になるためだ。ドイツでは出願から認可までの期間が5年以下の医薬品はSPC申請の対象にならず、小児医薬品規制に基づく延長も受けられない。一方、他のEU加盟国では5年に満たなかった分を小児医薬品による延長分(6カ月)から差し引く形で認めている。出願から認可までの期間が4年9カ月なら、小児医薬品分として3カ月の延長が得られることになる。

\

今回の係争は、米メルクが糖尿病薬「シタグラプチン」のSPC申請が却下されたのは不当として独特許商標庁(DPMA)を相手取って起こしたもの。同薬は出願からEU認可までに4年8カ月以上を要しており、引き算式を認める加盟国であれば約3カ月の特許延長が得られた計算になる。審理を行っていた独連邦特許裁判所は、EU法に関する案件だとしてECJの判断を仰いだ。

\