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2011/11/9

経済産業情報

核内倍加を制御するタンパク質特定

この記事の要約

細胞分裂を伴わずにDNAの複製だけが起こる「核内倍加」と呼ばれる現象で、2種類の因子がプロセス制御に大きく関与していることを、独がん研究センター(DKFZ)とハイデルベルク分子生物学センター(ZMBH)の研究チームが突き […]

細胞分裂を伴わずにDNAの複製だけが起こる「核内倍加」と呼ばれる現象で、2種類の因子がプロセス制御に大きく関与していることを、独がん研究センター(DKFZ)とハイデルベルク分子生物学センター(ZMBH)の研究チームが突き止めた。チームは今回の発見が核内倍加メカニズムの解明につながることに期待を寄せている。

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核内倍加はDNAが複製された後、細胞分裂が起きずにDNAの量だけが倍増していく現象で、多くの植物種で起こることが知られている。核内倍加を起こした細胞は肥大化するため、成長の原動力となっており、地上で生産されるバイオマスの半分が核内倍加によって発生しているとの試算もある。同現象は一部の動物でもみられ、ショウジョウバエの唾液腺やヒト巨核球(造血系細胞)が例として挙げられる。ただ、核内倍加は細胞分裂に比べて研究が遅れており、そのメカニズムはほとんど解明されていない。

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DKFZとZMBHの研究チームは今回、ショウジョウバエ(Drosophila)の細胞を検体サンプルとして実験を行った。遺伝学的スクリーニングとコンピューター・モデリングの両方から仕組みの解明に着手。ESF1転写因子(細胞周期におけるG1/S期の移行に大きく関与)と、ユビキチンリガーゼの1種でESF1の破壊役であるCRL4-CDT2が核内倍加で重要な役割を果たしていることを確認した。仕組みは(1)ESF1によってサイクリンE(G1/S期の細胞周期回転でモーター役)の発現が促されS期(DNA合成期)に進行する(2)S期に入るとCRL4-CDT2が活性化しESF1を速やかに破壊する(3)CRL4-CDT2が不活性化し、ESF1が再び増加を開始(4)ESF1が一定量に回復して(1)に戻る――を繰り返す。

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研究の成果は『Nature』誌に掲載された。

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