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2011/11/16

ゲシェフトフューラーの豆知識

従業員への事業売却通知で最高裁判決

この記事の要約

事業を売却する際は、現在の雇用主ないし将来の雇用主が当該事業の従業員に対し◇事業売却の時期◇理由◇従業員が受ける法的・経済的・社会的な影響◇従業員のために講じる措置の4点を文書の形で事前に通知しなければならない。これは社 […]

事業を売却する際は、現在の雇用主ないし将来の雇用主が当該事業の従業員に対し◇事業売却の時期◇理由◇従業員が受ける法的・経済的・社会的な影響◇従業員のために講じる措置の4点を文書の形で事前に通知しなければならない。これは社会法典(BGB)613a条5項に記された決まりである。また同条6項には、従業員が同文書を受け取ってから1か月以内に文書で異議を申し立てることができるとある。この条項をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が10日に判決(訴訟番号: 8 AZR 277/10)を下したので、ここでお伝えする。

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裁判を起こしたのはコールセンターA社に勤務していた女性社員。A社は2008年10月25日付の文書で社員に、同社を12月1日付でT-GmbH(有限会社T)に売却することを通知した。原告社員はこの時点では異議を挟まなかった。

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原告はT社に移籍後の09年5月13日、T社との雇用関係を同6月30日付で解除する契約を締結。その3日後の5月18日になって、事業売却に関するA社の通知はBGB613a条5項の基準を満たしておらず無効だと主張。A社との雇用関係は現在も続いているとしてその確認を求める訴訟を起こした。

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下級審のベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所はこの訴えを棄却、BAGも同様の判決を下した。判決理由で裁判官は、A社の通知がもしBGB613a条5項の満たしていないのであれば、同条6項に定める1カ月の異議申し立て期間は始まっておらず、A社での雇用関係は継続していると指摘。そのうえで、A社の通知はBGB613a条5項の基準を満たしていたとして、異議申し出期限はすでに終了しているとの判断を示した。

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