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2011/11/16

ゲシェフトフューラーの豆知識

中国人との結婚で解雇は違憲

この記事の要約

中国は国外在住の自国民を産業スパイなどとして利用している。高い技術力を持つドイツも当然その対象に入っており、治安当局はスパイ活動の具体例を挙げるなどしてしばしば警鐘を鳴らしている。このためドイツ企業の間でも警戒感は強くな […]

中国は国外在住の自国民を産業スパイなどとして利用している。高い技術力を持つドイツも当然その対象に入っており、治安当局はスパイ活動の具体例を挙げるなどしてしばしば警鐘を鳴らしている。このためドイツ企業の間でも警戒感は強くなっているようだ。こうした事情を背景に起きた解雇訴訟があるのでここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは国防軍に製品を納入する企業に勤務していた47歳の技術者。2006年5月に派遣社員として採用されていたが、09年末になって雇用主から正社員に引き上げるとの提案を受けた。

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同技術者は以前から交際のあった中国在住の中国人女性との結婚式を同国で行う予定だったため、正社員への採用時期を式後の2010年2月とすることで雇用主と合意した。

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だが雇用主は同3月、セキュリティ上のリスクを理由に同技術者の職務を停止。6月になって経営上の理由を根拠に解雇を通告したため、同技術者はこれを不当として提訴した。

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第1審の労働裁判所は、産業スパイ活動のリスクに対する被告企業の懸念は解雇理由として正当だとして、原告の訴えを棄却した。これに対し第2審のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労働裁判所は、被告企業はスパイ活動のリスクについて具体的な事実を挙げていないと指摘。原告を解雇したことは結婚の自由を保証した憲法(基本法)6条1項の規定に反するとの判断を示した。最高裁への上告は認めなかった。

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この判決に先だって雇用関係は原告の申請で解消された。原告は月給の7カ月分に相当する一時金を受け取っている。

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