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2011/11/23

ゲシェフトフューラーの豆知識

退職証明書の表現には注意を

この記事の要約

退職する被用者は退職証明書の発行を雇用主に要求できる。これは営業令(GewO)109条1項で保障された権利である。証明書には最低、勤務の内容と期間が書かれていなければならないが、被用者は勤務態度と業績についても盛り込むよ […]

退職する被用者は退職証明書の発行を雇用主に要求できる。これは営業令(GewO)109条1項で保障された権利である。証明書には最低、勤務の内容と期間が書かれていなければならないが、被用者は勤務態度と業績についても盛り込むよう要求できる。この場合、雇用主は表現に細心の注意を払ったほうがよい。何でもないような言葉づかいがトラブルの元になりかねないからである。ここでは最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が15日に下した判決(訴訟番号:9 AZR 386/10)に即してこの問題をお伝えする。

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裁判を起こしたのはSAPコンピテンスセンターに2004年4月1日から07年2月28日まで在籍していた職員A。同職員は退職に当たって退職証明書の発行を請求した。証明書は以下のような文面だった。

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「われわれはAが仕事に常に前向きに取り組む意欲とモチベーションの極めて高い従業員だと理解しました。Aは通常の勤務時間を超えて会社に尽くしました。彼の仕事にわれわれは常に満足していました」

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Aは証明書の第一文にある「理解しました」という表現を問題視した。ドイツ語は「kennenlernen」という動詞である。Aは「この言葉は職業生活ではネガティブな意味を持っている」と主張。被告のSAPコンピテンスセンターはこの表現でAがモチベーションの低い職員であるとの認識をほのめかしたとして提訴した。退職証明書のなかで被用者について多義的で不明確な表現をすることを禁止したGewO109条2項の規定に違反すると判断したのである。

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Aの訴えは第1、第2審で棄却、最終審のBAGも同様の判断を示した。判決理由で裁判官は、「意欲とモチベーションが極めて高い従業員だと理解しました」という文面からは、原告は意欲が低くモチベーションに欠けると暗に表現していたとは受け取れないとの判断を示した。

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