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2011/12/7

総合 - ドイツ経済ニュース

企業の研究開発投資が回復

この記事の要約

研究開発や教育の促進団体である科学促進者連盟(Stifterverband fuer die Deutsche Wissenschaft)が5日発表した独民間企業の2010年の研究開発(R&D)費は計573億ユ […]

研究開発や教育の促進団体である科学促進者連盟(Stifterverband fuer die Deutsche Wissenschaft)が5日発表した独民間企業の2010年の研究開発(R&D)費は計573億ユーロで、前年から3.7%増加した。企業のR&D費用はリーマンショック後に後退したものの、拡大傾向が続いており、今年も5.1%伸びる見通しだ。官民合わせたR&D投資額の対国内総生産(DGP)比率は2.82%となり、欧州域内の国としては高い水準に達したものの2010年に同3%を達成するとした政府目標には届かなかった。(グラフ1、2を参照)

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欧州連合(EU)は2000年に採択した「リスボン戦略」で、EUを2010年までに世界で最も競争力のある経済圏に成長させるとの構想を打ち出し、域内GDPに占める研究開発費の割合を3%に引き上げる数値目標を設定した。3%の目標のうち2ポイントは産業界、残り1ポイントは公的セクターで実現するとしている。

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ドイツもこの数値を自国の目標に設置して実現に取り組んできた。その成果は2000年代前半には現れず、R&D支出の対GDP比率は00年の2.45%に対し5年後の05年も2.48%にとどまっていた。

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当時は社会民主党(SPD)と緑の党からなる中道左派のシュレーダー政権が構造改革を進めていたほか、企業も競争力の強化に向けて世界の事業体制を大幅に見直していた時期に当たる。このため、研究開発資金を大幅に増やす余力は乏しかった。グラフ2をみると分かるように、経済界のR&D投資額は05年まで緩やかな増加にとどまっている。

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企業のR&D投資拡大が加速するのは06年からだ。官民の構造改革の成果が目に見えて表れてきた年に当たり、GDP成長率は前年の0.8%から3.4%へと急上昇。07年も2.7%の高水準に達した。その後は金融・経済危機で経済成長とR&D投資が一時的に後退したものの、10年からは再び拡大モードに移っている。

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10年の経済界のR&D投資額を業界別でみると、自動車が全体の31.6%を占めて最も多い(グラフ3を参照)。これに電機、機械、製薬、化学が続く。自動車は前年比の増減率も7.2%と高く、全体をけん引したことが分かる。一方、電機と機械は増加幅がそれぞれ2.66%、2.18%と経済界全体(3.7%)を下回り、化学と製薬はそれぞれ前年比2.3%減、4.1%減と後退した。

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R&D投資の対GDP比率が最も高い国はスウェーデンで、09年に3.96%に達した。フィンランド(同3.62%)、日本(3.44%=08年=)、韓国(3.36%=08年=)、スイス(3.00%)も3%の大台に乗っている。一方、EUは27カ国平均が2.01%と低く、フランスと英国もそれぞれ2.21%、1.87%にとどまる。科学促進者連盟は「EUは(同3%の)目標値を2020年になっても実現できない」と予想する。具体的な根拠は提示していないものの、ユーロ危機を受けて財政再建の取り組みが加盟各国で本格化するとみられるため、公的機関のR&D資金が削られるほか、域内成長の鈍化で企業の投資余力が低下する恐れがある。

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