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2011/12/7

経済産業情報

窒素固定酵素、活性中心の謎の物質は「炭素」

この記事の要約

窒素固定酵素ニトロゲナーゼの触媒反応にかかわる重要な補因子である「鉄モリブデン補因子(FeMo-co)」で、中心に位置しこれまで特定できなかった“謎の物質”が炭素であることを、マックス・プランク生物無機化学研究所を中心と […]

窒素固定酵素ニトロゲナーゼの触媒反応にかかわる重要な補因子である「鉄モリブデン補因子(FeMo-co)」で、中心に位置しこれまで特定できなかった“謎の物質”が炭素であることを、マックス・プランク生物無機化学研究所を中心とする独米研究チームが突き止めた。FeMo-Coの分子構造が解明されたことで、従来のハーバー・ボッシュ法に代わる新たな窒素固定法の開発につながると、研究チームは期待を寄せる。

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窒素固定は大気中に存在する安定な窒素分子をアンモニアなど反応性の高い窒素化合物に変換するプロセス。自然界では土壌細菌アゾトバクターやマメ科植物に共生する根粒菌などによって行われる。工業的には酸化鉄を主体とする触媒を用いて窒素と水素とを反応させる「ハーバー・ボッシュ法」が主に用いられているが、高温高圧(400~600度、200~400気圧)という過酷な反応条件が必要で多量のエネルギーを消費する欠点がある。このため、植物の窒素固定メカニズムをモデルに、より温和な反応条件下で窒素分子をアンモニアに合成する技術への関心が急速に高まっている。

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FeMo-Coの分子構造は2002年にほぼ解明されたが、中央にある分子は炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)といった「軽い元素」という以上は分かっていなかった。

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マックス・プランク生物無機化学研究所、米コーネル大など独米5機関の研究チームは今回、原子価対コアX線発光分光(V2C XES)による発光スペクトル分析と計算分子科学を組み合わせ、未知の物質の割り出しに取り組んだ。候補の元素をシミュレーションでFeMo-Coの未知の分子に置き換えてそれぞれの発光スペクトルを計算、これを実際の測定結果と比較した。この結果、炭素に置き換えた時の理論スペクトルと実測値が一致することを確認した。

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研究の成果は『Science』誌に掲載された。

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