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2011/12/7

経済産業情報

排出権取引、価格下落で崩壊の恐れも

この記事の要約

欧州連合(EU)の排出量取引制度(EU-ETS)に基づく二酸化炭素(CO2)の排出権取引が危機に瀕している。ユーロ圏の債務危機による先行き不透明感や景気低迷に伴う製造業生産の減少を受けて排出権需要が減少し価格が急落してい […]

欧州連合(EU)の排出量取引制度(EU-ETS)に基づく二酸化炭素(CO2)の排出権取引が危機に瀕している。ユーロ圏の債務危機による先行き不透明感や景気低迷に伴う製造業生産の減少を受けて排出権需要が減少し価格が急落しているためで、欧州エネルギー取引所(EEX)のスポット価格は11月25日に、EU-ETS第2期が始まった2008年以降で最低の7.73ユーロ/トン(CO2換算)まで落ち込んだ。このままでは排出権取引システム自体が崩壊しかねないとして、関係者は頭を痛めている。5日付『ファイナンシャル・タイムズ(ドイツ版)』紙が報じた。

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スイスの金融大手UBSはこのほど発表したレポートのなかで「排出権取引制度は機能していない」と指摘した。排出権の供給過剰により価格は今後2年で最大3ユーロまで下落し、需給バランスが回復するのは2025年以降と予想している。

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CO2排出権取引制度はエネルギー使用量の多い企業を対象にしたもので、政府から割り当てられたCO2排出量の上限を超えた企業は下回った企業から余剰分を購入することが認められている。この取引価格が高いほど、企業にとっては排出権を購入するよりCO2削減に投資した安上がりになる。一方、取引価格が下落すればするほど排出権を買った方が安上がりになるため削減努力がおろそかになる恐れがある。市場関係者によると、削減努力を促す排出権価格の下限は12~15ユーロという。

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伊大手銀行ウニクレディトのアナリストは削減努力が低下することで温暖化防止に向けた世界のけん引役としてのEUの地位は失われるとの見方を示した。

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