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2011/12/14

経済産業情報

猛毒リシンの解毒剤実現も、カギとなるタンパク質を特定

この記事の要約

トウゴマの種子に含まれる猛毒のタンパク質「リシン」が細胞を死に至らしめる仕組みを解明することに、分子生物工学研究所(IMBA)を中心とする国際研究チームが成功した。遺伝子スクリーニングと幹細胞生物学を組み合わせた独自手法 […]

トウゴマの種子に含まれる猛毒のタンパク質「リシン」が細胞を死に至らしめる仕組みを解明することに、分子生物工学研究所(IMBA)を中心とする国際研究チームが成功した。遺伝子スクリーニングと幹細胞生物学を組み合わせた独自手法を用い、「Gpr107」と呼ばれる細胞内タンパクがリシンの破壊的作用に大きく関わっていることを突き止めた。研究チームはGpr107を標的とする低分子阻害剤を開発することでリシンの解毒剤が実現すると期待を寄せる。

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リシンは細胞質におけるタンパク質合成を阻害することにより細胞死を起こす。死に至る時間は被ばく量にもよるが36~72時間とされる。第二次世界大戦中に化学兵器として使用されたほか、今年8月にはテロ組織アルカイダがトウゴマを大量に集め、リシン爆弾を製造しようとしているとの報道が流れ、世界を震撼させた。これまでのところワクチンや解毒剤は存在しない。

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墺IMBAを中心とする墺独米加4カ国の計8機関からなる研究チームは、マウス胚から半数体胚性幹細胞を作製し、遺伝子トラップ法と突然変異誘発を用いてゲノムワイドのスクリーニングを実施。その後、スクリーニングで見つかった数千種類の突然変異にリシンを作用させ、耐性を持つ遺伝子の獲得または消失がないかを調べた。この結果、リシンの作用を受けた49の突然変異が全てGpr107内で起こっていたことを確認した。

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研究の結果は『Cell Stem Cell』誌に掲載された。

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