解雇が正当化される重要な根拠の1つとして、被用者が問題行動を今後も繰り返すと予測されるということがある。ドイツの法曹界ではこれを「予測原則(Prognoseprinzip)」などと呼ぶ。では、将来的に問題行動を繰り返す可能性がないケースでは解雇ができないのかと言うとそうではない。ここではヘッセン州労働裁判所が8月に下した判決(訴訟番号:7 Sa 248/11)に即してこの問題をお伝えする。
\裁判を起こしたのは銀行で法人顧客業務を担当していた36歳の元行員。同行員は2010年12月末日付で退職することで雇用主と合意。7月1日から退職までの半年間は給与を受け取りつつも勤務を全面的に免除されること(Freistellung)を取り決めた。
\同行員は勤務最終日の6月30日に、顧客企業の融資枠やリスク分析など機密度の高いデータを計94通の電子メールで自分のプライベートのアドレスに送付。これを知った被告銀行は7月20日付で即時解雇を通告した。原告はこれを不当として提訴した。
\第1審のフランクフルト労働裁判所では原告が勝訴。一方、第2審のヘッセン州労裁では敗訴した。判決理由で裁判官は、原告は7月以降、勤務を免除されており機密データを再び送信することはないとしつつも、問題の行為は原告に対する雇用主の信頼を著しく損なうものだったと指摘。原告を解雇し約束した給与の支払いも行わないことは妥当だとの判断を示した。
\