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2011/12/21

経済産業情報

適時開示怠り投資家損害、銀行に賠償責任=最高裁

この記事の要約

米サブプライムローン問題に起因する株価下落で損害を被ったIKB産業銀行の株主が同行に損害賠償を求めていた係争で、最高裁の連邦司法裁判所(BGH)は13日、銀行側に賠償責任はないとするデュッセルドルフ高等裁判所の判決を破棄 […]

米サブプライムローン問題に起因する株価下落で損害を被ったIKB産業銀行の株主が同行に損害賠償を求めていた係争で、最高裁の連邦司法裁判所(BGH)は13日、銀行側に賠償責任はないとするデュッセルドルフ高等裁判所の判決を破棄した。同行はサブプラ問題が株価に及ぼしうる影響を認識していたにもかかわらず情報開示を行っておらず、証券取引法(WpHG)第37条bに定める適時開示義務への違反を認定した。(訴訟番号:XI ZR 51/10)

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原告の投資家は2007年7月26日、個人投資家が同日に取得したIKBの発行済み株式1,000株を2万3,916.4ユーロで譲り受けた。その翌日に深刻な経営状況が表面化。また、同週末には同行が巨額の損失を出し、大株主である政府系の復興金融公庫(KfW)などから緊急支援を受けたことも明らかにされ、株価は急落した。IKBはこれに先立つ20日、「サブプラによる損害は軽微」との声明を発表しており、原告は同日の誤った情報によって損害を被ったとして提訴した。同声明を発表するよう指示したシュテファン・オルトザイフェン頭取(当時)は今年8月、故意の市場操作で罰金・禁錮刑を言い渡されている。

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BGHの裁判官は、WpHG20条a(市場操作の禁止)と民法823条(損害賠償義務)の規定は「証券取引市場全体を健全に機能させることが狙いであり、個人投資家保護を目的としたものではない」と指摘し、これを根拠に損害賠償を求めることはできないとする前審の判断を支持した。一方、適時開示については「20日付でプレスリリースを発表したのは、サブプラ問題がわが身に及ぶことを認識していたことを示すものだ」として、義務を怠っていないとする前審の判断を否定。そのうえで、IKBが適時開示を行っていれば原告に株を売却した個人投資家がそもそもIKB株の購入を見合わせていたかが解明されていないとして、審理を差し戻した。

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